What is Autism?
Q1:自閉症って、心の病気?
⇒ 漢字では漢字では「自らを閉ざす」と書くので、うつ病や
ひきこもりと誤解されますが、心の病気ではなく、生まれ
つきの脳の障害です。
※「自閉症」の英語名Autismの語源は、ギリシャ語の"autos"(自己を意味する)。スイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが1911年に、統合失調症患者にみられる症状として「外の世界との関わりを絶って自分自身の中に閉じこもってしまう状態」を指して、そこからAutismという名称が生まれたと言われています。
多くの自閉症者は、一般の人とは違った自己表現の仕方をします。ハグなどのスキンシップを嫌がる人もいる一方、注意を引こうとして体に触れてきたり、笑顔を見せてくれたりして、とても人懐こい印象を与える人もいます。特に高機能自閉症の場合は、一般的に恥ずかしいと思って秘密にするようなことでも正直に話してしまったり、場所やタイミングをわきまえず、誰にでも声をかけてしまったり。。。
一般的にイメージされている「自閉症」とは違うように見える「自開症」の人もいるのです。
自閉症は、左の表のように沢山ある発達障害の一部。症例が多彩であり、健常者と重度自閉症者までの間に明白な境界がないので、アメリカでは、幅広い連続体「spectrum」という意味で、「Autism Spectrum Disorders=ASD」と呼んでいます。日本でも、なぜ「自閉症」という障害名が改められないのか、もっとこの障害にふさわしい名前がないのか。。。といった点が疑問視されています。
これまでにも、「精神分裂病⇒統合失調症」「精神薄弱⇒知的障害」「メクラ⇒ 盲目の人」など。。。誤解や偏見を招きやすい病名・障害名は改名されてきたので、自閉症に関しても改めていく動きがしばしばみられ始めました。このため、 より広い概念の「広汎性発達障害」や「軽度発達障害」という言葉を使う場合もあります。
Q2:自閉症児が生まれる確率はどれくらいですか?
⇒ 自閉症児の出生率は、統計的には 世界的に、毎年、急速に増加しています。
ただし、自閉症が実際に増加しているのではなく、疾患が世の中に認知されるにつれ、
従来診断されなかった軽度のものも含まれるようになってきているから と考えられてもいます。
■日本■
横浜リハビリ テーションセンターのHonda H氏らがまとめた 横浜市においての調査 では、5 歳までのICD-10 に基づいて診断した自閉症の累積罹患率(cumulative incidence rate,5 歳になるまでに発症する率)は1 万人あたり27.2 人。この論文では、1988 年から1991 年までの4 年間の出生年で比較していますが、1988 年生まれでは1万人あたり16.2 人、1991 年生まれでは27.3 人と、増加傾向が認められました。
よこはま発達クリニックのサイトによると、このような記載が。
少し前の医学書には、自閉症はとても珍しい障害で1万人に5人くらいしかいない、と書いてありました。ところが最近の医学的調査の結果、自閉症はもっと ずっと多い障害であることがわかってきました。今では、自閉症は典型的な子どもの数だけ数えても1000人に2~6人、典型的でない軽症のタイプの子ども まで合わせると100人に1人くらいはいると考えられています。
■アメリカ■
国内調査によると、1994年以前の自閉症発生率は2000人~5000人に1人でしたが、「DSM-IV」という診断システムにて、自閉症の仲間に「アスペルガー障害」が加えられて以降、20~40倍に増加。最新(2013年)の調査では、なんと!2012年に発表された前回の推計より30%増加の68人に1人に。
※ただし、今回の調査結果は、2010年にアメリカ11か所で行われた8歳児のみの診断の結果に基づいているもの。アメリカでは、自閉症と診断されると教育面で優遇されるなどの社会的背景があり、診断数の増加につながっているとの見方も。
※アメリカの精神科医アレン・J.フランセス(Allen J. Frances)は、「精神科の診断を、法医学的判断、障害判断、学校の判断、養子縁組の判断などから切り離すべき。精神科の診断は意思決定の一部であるべきであって、唯一の決 定要因ではない。」と強調しています。
■台湾■
国立成功大学、私立長栄大学、嘉義キリスト教病院が3~17歳の障害者登録データを基に共同で行った研究によると、自閉症の患者数は2004年の3995 人から2009年には7479人へと増え、都市部では過疎地域の2倍になることも確認されました。研究に参加した成功大学の郭浩然教授は、登録数が増加したことについて、障害者への支援体制が整備されつつあること、自閉症への理解が高まりつつあることなどが原因だと見解を示しています。
■韓国■
エール大学医学部児童研究センターのキム・ヨンシン教授チームが行なった調査(American Journal of Psychiatry2011に発表)によると、京畿道のある地域の小学生5万5000人(発達障害診断済みも、普通学級に通学している子ども達も全て)と保護者を対象に全数調査を実施した結果、(7歳から12歳)の自閉症(ASD)の有病率は2.64%(38人に1人の割合)で、アメリカの1.0%、日本の1.8%をはるかに上回るという報告でした。
※子ども全員に一貫したいろいろな検査法を用いて実施。この方法で、普通学級に通う2/3以上の子ども達が自閉症との結果が出たそうです。
【関連/引用/参考サイト】
・The US Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
・Prevalence of Autism Rises | News | Autism Speaks
・台湾、自閉症の発生が増加傾向=大学調査 - ライブドアニュース
・米国の子どもの68人に1人が自閉症、前回調査より3割増 - ライブドアニュース
・Prevalence of Autism in South Korea Estimated at 1 in 38 Children-ScienceDaily
Q3:自閉症は、性別に関係なく発症しますか?
⇒ これまでの研究では、男の子に多くみられ、女の子の5~6倍 と言われています。
この差の謎・原因は未だ不明ですが、ある最新の遺伝子研究によると、女の子の方が男の子より突然変異に”耐性”があることが関係しているそうです。
※スイスと米国の研究者らが共同で神経発達障害を抱える1万6000人のDNAサンプルと、ASDsを抱える800家族の遺伝子データを、遺伝子のコピー数の 変異(CNVs)と単塩基置換の変異(SNVs)に注目して解析。結果、神経発達障害を抱える女の子は、同様の障害を抱える男の子よりCNVsの 数が多かった。自閉症の場合でも、女の子が持つSNVsの数は同様の症状を有する男の子より多いこともわかた。研究員 は「神経が発達するときに起こる突然変異に対応しようとすることの現れ」と解説。つまり、女の子の方が男の子より遺伝子損傷を修復しようという働きが 強いということらしいです。
【関連/引用サイト】
・The US Centers for Disease Control and Prevention
(CDC)
・Prevalence
of Autism Rises | News | Autism Speaks
・台湾、自閉症の発生が増加傾向=大学調査 - ライブドアニュース
・米国の子どもの68人に1人が自閉症、前回調査より3割増 - ライブドアニュース
・Prevalence of Autism in South Korea Estimated at 1 in 38 Children-ScienceDaily
・自閉症はなぜ男の子に多い? 女の子は遺伝子の突然変異に“耐性”があることが関係か - IRORIO(イロリオ)
Q4:自閉症は、遺伝しますか?
⇒ 絶対に遺伝するとは言い切れませんが、両親が同じ二卵生の双子/兄弟
であれば、自閉症が発症率は約50%。「一卵生の双子」では、
さらに高くなります。
2014年5月以前の研究では、一卵性双生児であっても、発症率が40~90%と数字にかなりの差がありましたが、5月7日JAMA誌に掲載された 「the familial risk of autism(自閉症の家族リスク)」によると、スウェーデンの調査研究機関が「自閉症の遺伝性や環境要因との関係・家族内発生を調べる」最大規模の調査を実施。1982年から 2006年までに生まれた約350万人の子どものうち、
2009年時点で自閉症と診断が確定している約32,000人の家族について調査を行いました。
結果、家族間で自閉症児がいる場合、将来10万人が1年間に発症する率は・・・
・一卵性双生児---153.0
・二卵性双生児---8.2
・両親が同じ兄弟---10.3
・母親が同じ兄弟---3.3
・父親が同じ兄弟---2.9
・従兄弟---2.0
つまり、遺伝子の共有率が上がる(遺伝子が近くなる)ほど発症率も上がるので、遺伝的要因は明らかです。例えば、両親が同じ場合、二卵生双生児同士も、兄弟同士も遺伝子の一致率は同じなので、上記の発症率も「8.2 vs 10.3」とそう変わらない数字になり、遺伝子を共有している遺伝率に直すと「約50%」の確立になります。
しかし、兄弟2人以上が自閉症という家族を対象に、DNAの解析を行った海外の調査からは、「第7番の染色体の一部など、いくつかの染色体の領域に、自閉症と関係する遺伝子が位置する可能性が示されたものの、自閉症児では、CADPS2のmRNAのエクソン3が欠損しても、その親や兄弟姉妹では正常であった」との報告も。CADPS2が欠損しているからといって、必ずしも、そのまま子供に遺伝するわけではないのです。
遺伝性や環境要因との密接な関係は明らかですが、突然変異なのか、それとも別の理由なのか・・・・自閉症の遺伝子異常のメカニズムは、未だ解明されていません。
▲遺伝についての詳細は「原因・遺伝的要素」を参照▲
【関連/引用サイト】
・自閉症の遺伝性に関する大規模調査研究(2014年5月7日号アメリカ医師会雑誌(JAMA)掲載)
・自閉症の遺伝子を探る - こころの発達診療部 佐々木司(東京大学保健管理センター)
Q5:自閉症って、どんな感じですか?見ればわかりますか?
⇒ 黙って立っているだけでは、見た目≠健常者と変わりません。
もしも、
・その人が非常に重度の自閉症で、
・明らかに特徴的な動作(奇妙な指の動きする、身体を左右に揺らすなど)
の特徴をしていれば、わかるかもしれませんが、そうでなければ、非常に判断が難しいです。
▲自閉症はどのような感じか・・・詳細は「自閉症の症状/特徴」を参照▲
▲自閉症にはこんな症状もあります・・・詳細は「自閉症と併発しやすい症状」を参照▲
▲自閉症と似たような症状もあります・・・詳細は「自閉症と間違えやすい症状」を参照▲
Q6:自閉症の人達は、みんな同じような感じですか?
⇒ 表に現れる症状は一人一人異なり、まったく同じではありません。根本的な特徴に共通部分はあるものの、目が合わない人もいれば、目が合う人もいます。言葉が話せる人、話せない人、こだわりが強い人、弱い人、いろいろです。
▲自閉症はどのような感じか・・・詳細は「自閉症の症状/特徴」を参照▲
▲自閉症にはこんな症状もあります・・・詳細は「自閉症と併発しやすい症状」を参照▲
▲自閉症と似たような症状もあります・・・詳細は「自閉症と間違えやすい症状」を参照▲
Q7:自閉症かどうか・・・は、どうやって判定していますか?
⇒ 病院に行って「先生、うちの子、ちょっと発達に問題なところがあるんですけど。。。」と相談して、診察室で子どもの様子を少し観察、その日のうちに、即「あ、これは自閉症ですね。」となることはありません。どんなに、臨床経験が豊富な医師だとしても、診断には時間がかかります。
判定までの過程は、簡単に説明すると、下記の通りです。
↓↓
② 発達検査・言語検査・知能検査・心理検査(WISC・WAISなど)
自閉症の子どもの場合、認知機能の不均衡が認められる。
・同じ「言語知能」でも、理解・単語・知識課題の能力は低く、数唱・算数の能力は高い。
・同じ「動作知能」でも、絵画配列課題の能力は低く、積木・記号・符号・迷路課題の能力は高い。
↓↓
③ 下記の精神科の国際的な診断基準と照らし合わせながら、どの分類に該当するのか最終判断
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders--2014年での最新版はDSM-5)
アメリカ精神医学会(APA : American Psychiatric Association)作成
ICD (International Classification of Diseases)
世界保健機構(WHO)作成
こんな特徴が3歳くらいまでに表れたら、自閉症の診断が『とりあえず』確定します。
・対人関係における障害 (他人との関係が希薄で社会的な関係を上手に作ることが苦手)
・コミュニケーション障害 (言葉をきちんと使ったコミュニケーションをとることが難しい)
・イマジネーション障害 (様々な場面で想像力を駆使した遊びや活動が困難で、個々の興味関心
が狭く、特定の物や人などに強くこだわることが多い)
↓↓
④ 診断の検証・経過観察
上記で『とりあえず』と書いたのは、継続的なかかわりの中で経過観察を何度もした結果、最初に出た
診断が異なり、発達障害のタイプを修正することは、臨床的によくあることです。子どもの年齢や発達
段階、時期によって変化はありますが、中核的な特徴は生涯続きます。
ここで!注意!
※診断基準の年齢は、医学界では『3歳から』になっています。
2-3歳までの頃は自閉症と健常の境界線がまだはっきりしていないため。
子供の年齢が低いと、診断に至らないこともあります。
※自閉症と知的障害は別の基準で診断されます。
知的障害は、知能検査で測られる知的な能力が標準より低く、社会生活をする上での困難も合わ
せもつ障害です。一般的には,IQ70以下が診断の目安になります。 ICD-10( ICD-11 は
2015 年完成が予定)によると、自閉症児のうち約4分の3の人は、著しい精神遅滞が認められる
といわれていますが、知的障害を伴わない自閉症もみられます。
▲自閉症初期チェック・・・詳細は「自分でできる自閉症チェック」を参照▲
▲発達検査・言語検査・知能検査・心理検査・・・詳細は「自閉症の検査方法」を参照▲
▲自閉症の国際的な診断基準・・・詳細は「自閉症の診断基準/分類」を参照▲
▲自閉症のタイプ・・・詳細は「自閉症の診断基準/分類」を参照▲
【関連/引用/参考サイト】
・気になる子どもの診断 山崎晃資-1
PDF
・気になる子どもの診断 山崎晃資-2
PDF
Q8:自閉症になったのは、親の育て方が悪いからですか?
⇒ いいえ、違います。先天性の脳機能の障害です。自閉症として誕生したのは、決して、お母さんが悪いのではありません。
ただし・・・ここで!注意!
まだ、正式に医師からの診断がなく、親自身が「なんか、変かも・・・」と感じられる場合は、親の育て方に問題がある可能性もあります。
「自分でできる自閉症チェック」のページにも記載しましたが、児童精神科医・目白大学教授の山崎晃資氏執筆の「気になる子どもの診断」によると・・・子どもの問題行動は、親子関係における愛着の形成が乏しく、きちとした愛情の絆・コミュニケーションがとれていないのが原因かもしれません。
「変だな。。」と思われる問題は、
- あやしても笑わない
- 音に過敏である
- 人見知りをしない
- 親の後追いをしない
- イナイイナイバーをしても喜ばない
- 抱きにくい
- 視線が合わない
- 指さしをしない
- 言葉が遅い
- 人やテレビの動作のまねをしない
- 手をヒラヒラさせたり,耳を両手で押さえたりする
- 独り遊びが多く,他の子どもと遊ばない
- ごっこ遊びをしない
- こだわり行動が目につく
この中にありますか?
そして、子どもの行動に、下記の「愛着行動」は見られますか?
- シグナル行動(泣く・笑う・喃語・呼ぶ・特定の身振り)
- 接近行動(接近・後追い・しがみつき・吸う)
「そう言えば、うちの子は、そういった行動をしないなぁ。。。」と感じたら、障害を疑うよりも、親の子どもへのかかわり方をまず見つめなおしてください。
例えば・・・まったく障害のない赤ちゃんであっても、お母さんが話しかけずに、スマホに夢中だったり、テレビを見っぱなしだったり、笑わなかったりしたら、 赤ちゃんだって必然的に言葉が遅くなり、表情もなくなると言われています。先述の山崎氏によると・・・
赤 ちゃんが母親にあやされて笑うようになるのは、生後2,3カ月頃から。それ以前の笑顔は、なんらかの刺激によって表情筋が収縮したものであり、周囲の人々 とのかかわりとは関係がないために「自発的微笑」といい、生理学者は「しかめ面」と呼んでいる。ところが、母親が日々のかかわりの中で、言葉や動作で赤 ちゃんの注意を引きつけ、赤ちゃんの反応を見ながらタイミングよく話しかけ、笑いかけることを2~3カ月間続けていると、あやされた赤ちゃんは笑い返すよ うになり、「社会的微笑」に変わっていく。
・・・ということです。赤ちゃんは、何もしないでも、自分から自然に言葉や表 情・行動を学んでいくわけではありません。あくまでも、 周りからの刺激で脳が発達して、いろいろなことを習得して、人間に成長していくわけなんです。もしかしたら、親が子どもへのかかわり方を見直し、改善を図れば、子どもの行動に変化が表れてくるかもしれません。
そして、この親子の愛情の絆・コミュニケーションは、診断が正式に下りた自閉症児の育児にとっても、非常に重要です。自閉症児として誕生したのは、親のせいではありませんが、その後の成長過程での子どもの問題行動は、(全てではありませんが)親にも責任がある場合があります。それは、健常児でも同じですよね。どんな子どもでも、愛情にあふれている環境で育つことが、健全な成長には不可欠です。
▲なぜ自閉症が発症したのか・・・の詳細は「研究の歴史」「原因」を参照▲
【関連/引用/参考サイト】
・気になる子どもの診断 山崎晃資-1
PDF
・気になる子どもの診断 山崎晃資-2
PDF
Q9:自閉症は、ちゃんと治療したら治りますか?
⇒ いいえ。残念ながら、現代の医学では完全に完治ができる保障が証明された治療法は発見されていません。しかし、早期に治療を開始し、辛抱強く日頃のトレーニングをしていけば、症状の度合いによっては、日常生活に支障がない程度にまで回復しているケースもあります。
世の中には、
- 自閉症は心を閉ざしているだけなので、心が開かれれば治る。
- 自閉症は健常児/者と交流することで治る。
- 自閉症は裸足で歩かせれば治る。
- 自閉症はサプリメントなどの食事療法で治る。(オーソモレキュラー療法)
- 自閉症は水銀を体内から除去体すれば治る。(キレート療法)
などなど。。。期待を抱かせるような未試験の代替療法が広がっていますが、「我が子の症状を改善し てくれるなら何でもいいから方法を見つけたい!」という強い思いから、安易に安全性や有効性が確かめられていない代替療法を選ぶのは、本当に危険です。お金だけ取られて、何の効果もないだけでなく、かえって有害で症状を悪化させてしまうこともあります。
例えば,キレート療法はもともと鉛中毒用の治療法でしたが、「体内の鉛や水銀、特にワクチンの防腐剤として使われていたメチル水銀が自閉症を引き起こすのでは?」という考えから、自閉症の“治療”に転用されましたが、これらの金属と自閉症の関連性を証明した研究はなく、自閉症に対するキレート療法の効果が試験で確かめられたこともありませんでした。2005年には、キレート剤を投与された自閉症の5歳の男児が、副作用で死亡するという痛ましい事件が起きています。
▲いろいろな治療法・・・の詳細は「自閉症の治療法」を参照▲
【関連/引用/参考サイト】
Q10:どうすれば、自閉症を予防できますか?
⇒ 原因がまだ特定されていないため、予防することは不可能です。
Q11:自閉症の人に、どうやって接したらいいでしょうか?
⇒ 自閉症の人は、人とかかわることが苦手だったり、コミュニケーションをとることが難しかったり、こだわりがあったりします。まず、それらの特徴を理解し、決して無理に行動を規制するようなことはしないで下さい。
▲自閉症はどのような感じか・・・詳細は「自閉症の症状/特徴」を参照▲
▲具体的な接し方・・・詳細は「自閉症者への接し方」を参照▲
Q12:自閉症児の子育てって、どのくらい大変ですか?
⇒ ひとことでは語ることができないくらい大変ですが、自閉症児という診断が下りたからといって、「この世の終わりだ。もうこの子の将来はない!」というくらい悲観をすることもありません。
インターネットが普及し、自閉症児に対する認知度が上がってきてる現代では、自閉症児のいる日常を綴った体験ブログ・本が多く見られますが、どれを読んでも「自閉症児の育児は、すごく簡単!」と綴っているものはないでしょう。もちろん、健常児であっても、子育ては一筋縄ではいかないものですが、それでも、なんとか言葉で説得・説明をすれば納得してくれる、理解を示してくれることが多いと想いますし、年齢を重ねるたびに、できることが増えて、徐々に手が離れて行くでしょう。
一方、自閉症児は(症状の度合いによりますが)、独特のこだわりがあるために、なかなか臨機応変に日常生活を送ることができません。中には、「具合が悪く、高熱が出ているのにもかかわらず、いつも日課になっている入浴をしなければ、寝てくれない。」ということもあります。言葉で「熱があるから、今日はお風呂をお休みにしようね。」と説明しても、かんしゃくを起こして入ろうとするかもしれません。年齢が上がっても、みるみるうちに成長して、自立してくれるということも少ないかもしれません。『洋服の着脱』を教えるのに、毎日取り組んで3年、『おもらしをすることなしに、トイレで排泄』を教えるのに10年で、ようやく自分でできるようになるくらい、とてつもなく長い長いトレーニングになることも多々あります。
危険を自ら察知する能力が欠如している場合、脱走癖や自傷癖(自分自身を傷つける癖)・他傷癖(他人を傷つける癖)があれば、四六時中監視していないといけないので、一瞬たりとも気が休まることがないでしょう。
ここまで、怖がらせるネガティブなことばかりを書いてしまいましたが、なんとか親が「自閉症はこどもの個性」と受け入れることができれば、大変な思いをしても、愛情を注ぎ続ければ、どんな子どもでもきっと成長の変化を見せます。それは---ボタンひとつが自分で止められた。帽子をすんなりとかぶることができた。---といった普通の人から見たら、些細な出来事かもしれませんが、自閉症児の親にとっては、それまでのトレーニングの努力が報われた瞬間!!当たり前のことが、当たり前にできるようになるだけでも、心からの喜びとなるでしょう。
しかも、自閉症児によっては、ものすごく突起した才能を開花させる子どももいます。天才まではいかなくても、独特な色遣いやタッチで斬新な絵画を描く子もいれば、何も教えていないのに、最初からリズム感に長けている子、記憶力がずば抜けて凄い子などなど。。。その子のもっている個性、興味に上手く焦点を当てて、「褒める」育児をしてあげれば、本人も楽しいし、問題行動も減ってきます。
反対に、できないことが多いから、他の子どもと比べて「なんで、あなたはできないの!?」とスパルタ式に怒ってばかりいたら、子どもは萎縮してしまって、手がつけられないくらいひどい状態になる恐れもあります。この部分も、健常児とまったく同じですよね。
▲具体的な自閉症児の子育ての大変さ・・・詳細は「自閉症児を育てる過酷な現状」を参照▲
Q13:自閉症でも偉業を成した人がいますか?
⇒ もちろん!!!自閉症とうまく付き合って、素晴らしい成功を収めている人達が、世の中には沢山います。
下記リンクをご覧ください。「へ~~っ!こんな人もそうなんだ~!」って驚かれるかもしれませんね。
▲具体的な成功者・・・詳細は「障害の困難を克服した偉人」を参照▲
Q14:自閉症の人に英語教育は、ナンセンスですか?
⇒ 自閉症児の中には日本語より、英語の方が表現しやすいという説も。
英語では、"I want" ○○、"I see" ○○というように 主語&動詞が先に来て目的語が後に来ます。日本語だと、何々ください、何々が見えますのように、目的語が先に来て、動詞が後に来ます。前後関係や、状況を考えながら喋ったり受け取ったりしなければ理解できない日本語に比べると、英語は、文法が簡単で、主語や目的語がハッキリしていて、曖昧な表現や遠回しな表現が少なく、割とストレートなので、自閉症に合っているみたいなのです。
音楽と同様、英語も右脳で学ぶ方が効率がよいと言われています。大人になると、英語を日本語に訳したり、テキストを使って文法を学んだりするような左脳的な勉強法になりがちですが、話したり、文章にしたり、絵に描いたりといった表現することで、右脳でひらめいたイメージを具体的に英語で相手に伝える力がつくのが右脳勉強法です。人間の脳は、2歳ごろまでは右脳優先ですが、3歳ごろから左脳が働きだすと言われています。普段はあまり使われていない右脳を使うことで、脳を刺激し、別の部分でも大きな成長につながったとの報告があります。
東京都江戸川区立二之江小学校の小林省三校長、6年間の海外生活(英語圏)や都内の帰国・外国人子女教育推進センター校勤務等での経験から、特別支援学級の「わかくさ学級」にも英語の授業を導入しました。勿論、健常児のような受験戦争を勝ち抜くための英語習得を目的としているわけではありません。時代はグローバル化し、障害のある人もそうでない人も日常の生活で外国人とかかわる機会が増え、これからは異文化に住む人々と共に生きていくことが求められます。また、自閉症児には特有のこだわりがあり、教師の発音を繰り返して発声し、一度覚えた言葉は時間が経過しても忘れにくいというすばらしい記憶力を持っています。歌やチャンツ等の活動を好む傾向があることから、英語活動を通してさまざまな体験をさせることにより、国際コミュニケーション力の素地(共生、自己決定行動力、主体性)を育みたいと考え、導入されたそうです。実践して4か月、自閉的な傾向があり、日頃から日本語でのコミュニケーションをとりにくい子どもでさえも、最後にはプール納め式での代表スピーチを勤めるになるほど、表情が明るくなり、よく話しかけるようになったそうです。
自閉症のバイリンガル教育に力を入れているご家庭でも、「英語を話せるようになってコミュニケーションが図れるだけでなく、表情が豊かになり明るくなり、スキンシップが大好きになりました。今はしょっちゅう "I love you, mommy." "I want to kiss mommy." と言ってきたりします。」というように、英語を学ばせるメリットを話されている方も少なくありません。
【関連/引用/参考サイト】
・[PDF] 知的障害児に国際 コミュニケーション力を 育む英語活動の実践 小林省三
・自閉症児への英語教育 -江戸川区「わかくさ学級」の取り組み
・バイリンガリズム - 自閉症、諦めないで、ここから始まる、世界があります
・発達障害児への意欲的取組み ―江戸川区立二之江小学校のケースから 大釜茂璋
・特別支援学級における英語活動一小学校での実践から一[PDF]
英語ではAUTISM。
主に、社会性や他者とのコミュニケーション能力の発達が遅滞する発達障害の一種です。
「自閉症」というその名前からや、日常語でうつ病やひきこもり、内気な性格を指して自閉症と呼ぶこともありますが、これは医学的には完全に誤った言葉です。現在でも "他人に対して心を閉ざし、自分の殻に閉じこもってしまう病気"と勘違いしている方々もいるようですが、自閉症は脳の中枢神経に問題がある先天的な脳の障害です。親の育て方や環境から来る心の病気ではありません。脳の特性のために、目や耳から入ってきた情報を整理し、それらを意味のあるまとまったこととして認知することが難しくなってしまうのです。
自閉性障害の診断基準として、基本的な特徴を3つの観点から記述しています。1つ目は、対人的相互反応における質的な障害、簡単に言いますと、他人との関係が希薄で社会的な関係を上手に作ることが苦手であるという特徴です。2つ目は、意志伝達の質的な障害、つまり言葉を適切に使用してコミュニケーションをとることが難しいという特徴、そして3つ目は、想像力の発達が十分でなく、行動や興味・活動が限定され反復的で常同的であるということ、つまり、「様々な場面で想像力を駆使した遊びや活動が困難であり、個々の興味関心が狭く、特定の物や人などに強くこだわることが多い」という特徴です。
これらの自閉性障害の基本的特徴は、3歳位までに現れ、その人の年齢や発達段階、時期によって大きく変わりますが、中核的な特徴は生涯続きます。1万人に4人の割合で発生すると言われており、その男女比は3:1。自閉性障害のうち70%はIQ(知能指数)が70よりも低く、50%はIQ50~55よりも低いとされています。また、自閉性障害の約75%に知的障害があるといわれていますが、自閉性障害(自閉症)はあるけれども知的発達に遅れがない場合もあり、「高機能自閉症」と呼ばれています。
この障害は段差をなくすバリアフリーなどはなんの役にも立ちません。心のバリアフリーと社会的な福祉支援が不可欠です。日本の「発達障害者支援法」が施行されたのが2005年。まだまだ通う学校もない、受け入れてくれる施設もない状態が続いています。将来に悲観し、絶望感から、虐待、無理心中が後を絶たないという現状があります。
我々に出来る事は限られていますが、正しい認識を持つ事だけでご家族にとって、どれだけの勇気がもてるか計りしれません。
残念なことに、現時点では具体的な原因がわかっていないため根本的な治療法はありませんが、早期発見・早期療育によって、成長と共にある程度は改善が期待されます。