Possible Associated Symptoms
自閉症は、沢山ある発達障害の一部。症例が多彩であり、精神的な疾病と類似している点があり、下記のように、別のさまざまな症状を合わせ持っている場合が多く見られます。
① 知的障害 Mental Retardation
② 学習障害 LD:Learning Disabilities
③ てんかん Epilepsia
④ 注意欠陥障害 ADD:Attention-Deficit Disorder
注意欠陥多動性障 ADHD:A-D Hyperactivity Disorder
⑤ チック障害 Tic Disorder
① 知的障害 Mental Retardation
実体として目に見えない・見えにくいものであるために、一線を持って区切ることができない背景があるためか、法的な定義がありませんが、厚生労働省が1995年以降から5年に一度実施している「知的障害児(者)基礎調査」が概念を用いる時に使われる下記の定義です。程度の関連から判定し最重度、重度、中度、軽度の判定をすることになりました。主に、低機能自閉症(まれにダウン症とも)との合併が見られます。
・知的機能の障害(標準化された知能検査-田中ビネーや
WISCやK-ABCなど-によって測定された結果、知能指数(IQ)が70以下)がある
・知的機能の障害の症状が発達期(おおむね18歳まで)に表れる
・日常生活能力(自立機能・運動機能・意思交換・探索操作・移動・生活文化・職業等
に支障が生じているため、何らかの特別の支援を必要とする状態にある
因みに・・・アメリカの知的障害者協会(AAMR)が1992年に出した定義には「コミュニケーション、身辺処理、家庭生活、社会的スキル、地域社会の資源利用、自己管理、健康と安全、実用的な教養、余暇活動、労働のうち、2つ以上の領域で制約があるもの」ともされています。
これらの用件がすべて相当した場合、知的障害になりえるわけですが、通常、事故の後遺症や痴呆といった発達期以後の知能の低下は知的障害としては扱われません。事故の後遺症については通常の医療給付の問題であり、痴呆については老人福祉の問題と考えられるためです
② 学習障害 LD: Learning Disabilities/Learning Disorders
英語のLearning Disabilitiesの頭を取ったもので、日本語で「学習障害」と呼ぶ場合の「障害」の言葉が重い為、LDと 呼ばれることが多くなりました。英語で複数形で表記されていることからも分かるように、単一の障害ではなく症状は様々です。医学、心理学、教育学の分野に またがって研究が進められ、それぞれで若干概念が異なっています。バランス感覚を欠き、身体の協調運動の困難を合わせ持つ子も多いため、リハビリテーショ ン医学の分野でも研究が行われています。
■ 定義 (日本・文部科学省1999年/アメリカ・連邦合同委員会1981年)
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指す障害です。
■ 症状
高 機能自閉症と併発することがあり、両方とも症状が類似しています。知的発達に遅れがなく、学力が高い場合も多いため、障害があるということが理解されにく いのですが、常識的な判断が上手くできず、独特な関わり方をすることで「変わった子ども」と見られ、いじめの対象になることもあります。症状は色々あり、 分類も困難です。同じ症状でも人によって現れ方が違い、大人になっても症状は残ります。
【一般的な症例】
・そわそわと落ち着きが無く、じっとしていられない
・ぼんやりしていることが多い
・集中力がなく、授業をちゃんと聞くことができない
・特定のものへのこだわりと融通のきかなさ
・整理整頓ができない
・かんしゃくやひとりごと
・乱暴な態度を取る
・集団行動が出来ない、あるいは苦手
・左右が理解できない
・地図が読めない、あるいは日時や場所の概念がわからない
・鉛筆が持てない
・ボール蹴りがうまくできない
・よくつまずく
【言語面・算数などについての症状】
苦手な子供は、「ディスレクシア(Dyslexia)=日本では失読症、難読症、識字障害、読字障害」と呼ばれ、
LDの中では最も研究が進んでいるとされています。
・喋り方が不明瞭で聞き取りづらい
・単語が覚えられない
・文章の順番を変えて読んでしまう
・鏡に写したように左右逆向きの字を書いてしまう
・計算ができず、数の概念も理解出来ない
・記号の使い方がわからない
・文字を混同してしまう("ぬ"と"ね"、"い"と"り"など。)
■ LDと知的障害との違い
LD は、読み・書き・計算など学習面の一部、または全部に困難さがありますが、会話能力・判断力などの知能の他の面では障害がありません。知的障害の場合は、 学習面も含めて、知能面など全般的に困難さがあり、その点が異なっています。ただし両者は相容れないものではなく、例えば軽度の知的障害者が、学習面で重 度の困難があるような場合、LDと知的障害を合併しています。
■ LDと注意欠陥多動性障害との違い
共通する部分も多く、区別は難しいように見えますが、あえて言うなら、LDは学業上の問題、一方ADHDは、行動上の問題と言えるでしょう。
LDは、学業上において定義され、知能テストなどを用いて学習障害専門家や教育療法士などの専門家が判断します。ADHDは、学校あるいは家庭などでの行動やふるまいによって定義され、精神科医や臨床心理学者などによって判断されることが多いです。
ADHD はしばしばLDを併発していることもあり、その場合、余計に線引きは難しいですが、ADHDの一番の特徴である不注意、多動性、衝動性がみられるかどうか で、その判断がなされることが多いようです。両方に同じような症状が現れることもよくありますが、それぞれ対処法は違ってきますので、安易に自己判断しな いで専門家に診断してもらうようにしてください。
■ 原因
自 閉症と同様、現代の医学では解明されておらず、一部の症状を除いて医学的治療法もありませんが、生まれつきの中枢神経系の何らかの機能障害によるものと推 定されています。つまり、様々な感覚器官を通して入ってくる情報を受け止め、整理し、関係づけ、表出する過程のいずれかに十分機能しないところがあるもの と考えられるのです。しかし、中枢神経系のどの部分にどのような機能障害があるかについては、まだ十分には明らかにされていない状況にあります。
視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの他の障害、あるいは児童生徒の生育の過程や現在の環境における様々な困難といった外的・環境的な要因による学習上の困難から直接生じるものではありません。ある教科に対する学習意欲の欠如や好き嫌いとも異なります。
言 語障害については、器質的又は機能的な構音障害や吃音等の話し言葉のリズムの障害そのものは、学習障害の直接の原因となるものではありませんが、話す、聞 く等言語機能の基礎的能力に発達の遅れがあるという状態については、学習障害でも同様に見られることがあることに留意する必要があります。
統計によると、LD児には明らかに左利きや両手利きの割合が多く、「左利き」となんらかの関係があるのではないか・・・と言われています。
脳にも利き手と同じく利き脳が存在します。左手+左腕は右脳に直結しており、右脳は音楽、芸術性といったクリエイティビティや空間構成力、英語でVisual-Simultaneousと呼ばれる視覚同時性、すなわち感覚、直感型の思考をつかさどる脳。一方、右手+右腕は左脳に直結しており、通常左脳は言語能力、計算力をつかさどると同時に、英語でLinear-Sequential
と呼ばれる連鎖的思考を行う脳。言語機能は従来左半球に集まっており、右利きの人の95%は左半球優位となっています。しかし、左利きの人は、言語機能が片側に偏ることはないと言われていますが、このようなことが、脳に混乱を起こしているのでは、とも考えられています。
よく
右脳・左脳の論理の中で、男性が女性に比べて右脳が発達し、女性は男性に比べて左脳が発達していると説明されていますが、実際に左利きが多いのは圧倒的に右脳が発達した男性なのです。母親が妊娠中の男性ホルモンのレベルが高いと左利きの子供が生まれる可能性が高く、この男性ホルモンの過剰は、吃音(どもり)やディスレキシア(失読症)といったLDの原因になるとも言われています。
更に、てんかん、ダウン症、自閉症、精神遅滞も左利きの子供に多いですが、同時に天才的な頭脳の持ち主が多いのも事実です。左利きは右利きよりもIQレベル140以上、すなわち天才の域に達する IQ
レベルの確率が遥かに高いと言われています。この理由は、左利きが右脳と左脳をの双方を頻繁に使うためと説明されてはいますが、天才的能力を発揮する人々というのは、本来左脳でこなすべき計算や読解に右脳を活発に使っていたり、本来右脳を使うはずのデザイン作業や楽器のパフォーマンスに左脳を活発に使っていたりする場合が多いらしい。
しかし、上記の障害への影響は、左利きが原因というよりも無理やり左利きを矯正した結果とする説もあります。
脳の指令は左手に対して行っているものを、無理に右手を動かそうとすることで ストレスを生み、脳に悪影響を与えているのではないか、というものです。 これらの関係については実証されているものではなく、原因だとする確証もありません。しかし、LDの人に左利きが多い、というのも事実なのです。左利きの矯正については、世の中の多くが右利き用に作られているため、
左利きでは生活に不便だと考えられ、早いうちの矯正が必要としている場合が多いようです。
しかし、現在では、右利き有利の世の中が見直され、左利きでも使いやすいユニバーサルデザイン(文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の有無を問わず利用出来る施設・製品・情報の設計)と呼ばれる商品が浸透しつつありますが、アメリカなどに比べると、日本では遅れをとっていてこれからの分野のようです。
両利きの小児は、右利きの小児に比べて注意欠陥多動性障害(ADHD)、言語や学業上の障害、その他精神障害を抱えるリスクが高いことが新しい研究で示され、医学誌「Pediatrics(小児科学)」オンライン版に1月25日掲載されました。(印刷版は2月号に掲載)。
食事や書くことなど、1つの作業に右手、左手のどちらを使うかが決まっておらず両手のどちらも使う、あるいは作業によって左右の手を使い分けるなど、どちらの手にも優位性がない小児は両利きであるとされます。今回の研究では、北フィンランドバースBirthコホート研究(NFBC)に参加した1985~1986年生まれの小児8,000人のデータを分析。7~8歳時および16歳時の2回、教師、親および本人による症状の報告を通して言語障害、学業成績および精神問題を評価しました。
その結果、両利きの小児は、8歳では学業や言語に問題のある比率が右利きの小児の2倍であり、16歳では学校で言語面の問題がみられるほか、検査結果からADHDである可能性の高い小児の比率が2倍でした。ADHDには、落ち着きがない、作業に集中できない、衝動性、学業成績不振などの症状があります。また、両利きの小児には精神障害の徴候のみられる比率も高いことがわかりました。研究著者であるスウェーデン、ウプサラUppsala大学のAlina Rodriguez氏らは、両利きかどうかがADHDや他の精神問題の診断に利用できる可能性があると述べています。
今回の研究では小児の約1%が両利き、8%が左利きで、左利きと学業や精神面の問題との間に関連はみられませんでした。両利きの小児に学業不振やADHDが多い理由としては、脳の側性化および構造や機能が通常と異なることが考えられるといっています。通常は右利きの人は左脳に優位性があり、両利きの人は異なる脳の優位性パターンをもっていると、Rodriguez氏は説明。以前の研究では、失読症およびADHDの小児は右脳に障害がみられることが示されています。
米シュナイダーSchneider小児病院(ニューヨーク)のAndrew Adesman博士はこの研究について、興味深いが診断に利用するには限界があるとの見解をしめしています。今回の研究では、両利きの小児の大部分はADHDも学業不振もみられず、ADHDや学業不振のある小児の大部分は両利きではなかったと指摘。ただし、この分野の研究をさらに進める利点はあるとし、「今回のデータは、両利きと学習、注意力の障害との間に関連があるとの考えを裏付けるものである」と述べている。(2010年1月25日/Health Day News)
③ てんかん Epilepsia
発作を繰り返し起こす大脳の慢性疾患です。自閉症児は思春期になると、30%の割合で「てんかん」を併発することがあります。発作の初発年齢は、自閉症児以外の障害(精神遅滞なども含めて)では、おおよそ3歳までに発症することが多いのに対し、自閉症児は、3歳までに起こる率と思春期(10歳代)におこる率と、2回のピークがあります。自閉症と診断されて、3歳までに脳波検査を行うのも、それが理由だそうです。
10歳を超えてからの初めてのてんかん発作の場合、重症なケースに発展することが多く、発作が起きたことによる二次的な事故も含めて、重度の自閉症の死亡原因として第1位にあげられるほどです。
■ 症状
「てんかん=突然倒れて、泡を吹く病気」と勘違いされがちですが、近年の研究の成果により必ずしもそうではないことが判っています。
てんかん発作に伴う主な症状は、痙攣(けいれん)ですが、伴わない発作もあります。意識障害として、突然意識を失う・記憶が飛ぶ・急に活動が止まって昏倒する場合もあります。ただし、大半の発作は一過性であり、数分~10数分程度で回復します。発作に拠って影響を受ける部分は、主に「意識」で、「呼吸や瞬き・瞳孔反射」はあまり影響されません。
■ 種類
脳は部位によってさまざまな働きを持っていますので、脳のどの部位に過剰な興奮が起きるかによって、発作の起こり方も変わってきます。てんかん発作は、意識はあるものの物が見えなくなり、光や星などが見える「部分発作」、脳の電気信号の異常が脳全体に起こり、発作直後から全身がけいれんし、意識がなくなって倒れてしまう「全般発作」の2つに分類されています。
(発作の種類詳細)
■ 原因
大脳は、左右2つ(大脳半球といいます)に分かれていて、右半球は左半身を、左半球は右半身をそれぞれ支配しています。大脳の内部組織は灰白質(かいはくしつ)と白質に分かれており、この灰白質の一部もしくは全体が過剰に興奮(過剰放電)して起こる発作が、てんかん発作です。灰白質には神経細胞が集まっていて、さまざまな情報や信号を作り出しています。神経細胞は、普段は弱い電気信号のやり取りで情報の受け渡しをしていますが、突然、過剰に興奮する(強い電流が流れる)ことによって、意識がなくなったり、手足のけいれんが起こったりするのです。このとき、脳波に異常な波(棘波・きょくは)が現れます。
発作の引き金になるのは、疲労状態や睡眠時間、ストレスなどと言われています。
■ 対処法
目の前の人が発作で突然倒れ、呼吸が止まり、顔色が土気色になっていくのを見ると
最初はとても慌ててしまうかと思いますが、落ち着いて行動すれば大丈夫です。
もしてんかん発作がおこったら、次のことに心がけて下さい 。
- 慌てずよく観察する。
開始時刻と持続時間は? (出来れば正確に記録して下さい)
誘因があるか? (服薬時刻の遅れ、過労や発熱、光や音、テレビ等)
発作に気付かれたきっかけは?(動作が止まる、応答がちぐはぐになる、転倒する等)
発作中の身体の様子は?(一瞬のピクツキ、全身の痙攣、痙攣の左右差等)
発作中の意識は保たれているか?(名前を呼んで応じることが出来るかどうか)
- 救急受診する準備をしてください。
けいれんが体の一部にとどまり、全身に拡がらないときは、本人の安全に気をつけて、そのまま様子を見ます。また、全身にけいれんが起きた場合でも、普通は1分~数分で発作はおさまり、その後10~20分以内に意識が回復することが多いのでそのまま様子を見ていてかまいません。けいれんが長時間にわたって止まらないときや意識が戻らないうちに再びけいれんが起きる場合などはすぐに治療を受けなければならないので、病院に。
- 服薬は医師の指示通りに。急な断薬は重積発作をおこす可能性があります。
てんかんの治療では薬物療法が基本です。てんかんの薬物療法では抗てんかん薬と呼ばれる薬が用いられます。てんかんのタイプや発作の種類によって服用する抗てんかん薬は異なり、薬とてんかんのタイプ、発作の種類が合わないと、まったく効かないどころかブツブツが出たり、汗の量が少なくなるなどの副作用などでかえって状態を悪くしてしまう場合もあります。
④ 注意欠陥障害 ADD: Attention-Deficit Disorder
注意欠陥多動性障 ADHD: Attention-Deficit Hyperactivity Disorder
日本語名を見るとわかるように、注意力の障害と多動・衝動性を特徴とする行動(発達)の障害です。就学前に気づくことが多いですが、生まれつきの障害だといわれています。ADHDは自閉症のなかでもアスペルガー症候群と症状がとてもよく似て、知能には問題ありません。(自閉症などの他の障害との合併を除く)、決して稀な病気ではなく、子供の数%程度に見られ、小学校時代までの発症率は女の子よりも男の子のほうが高いとされています。
■ 症状---現れ方や程度にはかなり個人差がありますが、主に3つに分類されます。
不注意
*注意力や集中力が持続しない
(特に興味のないものに対して、長く注意を向けたり、集中したりするのが苦手。人と話をしている最中や勉強中でも、周囲でちょっとした動きや物音がすると、そちらに意識が向く。)
*忘れ物やケアレスミスが多く、宿題をやりとげられないこともある。
多動性(成長するにつれて、移動性多動から非移動性多動へと移行のが普通)
*移動性多動・・・落ち着きがなく、じっとしていることができない。
他の子が皆、席についても、先生が「席につきなさい」
と指示を出しても聞かず、歩きまわる。
*非移動性多動・・席を立たないが、ひっきりなしに体を動かしたり、
貧乏ゆすりをしたり、物をいじったり、きょろきょろと
いろんなところを見回していたり、ひっきりなしにしゃべり続ける。
集中できない。
衝動性
*外界からのさまざまな刺激(他人の話し声や、電話の音、虫の動きや羽音、落下物のたてる
音や動き・・・など)に無条件で反応してしまう。
*思いついた行動を唐突に行う(通りの向こう側に気になるものが見えたら、安全を確認せず
に飛び出す)
*思ったままを口に出してしまう(質問を聞かずに話し始める)
*順番を待てない
うつ病やPTSD、アスペルガー症候群でも類似の症状を呈する場合もしくは合併してしまう事もあり、正式には、アメリカ精神医学会のDSMや世界保健機構のICDによる基準を参考に、専門医が診断します。
し かし「だれでも努力すればできそうなこと」ができない障害なので、「なまけている、不まじめ」などと叱責されたり、軽蔑されたりすることが多々あります。 学校での学習や、行動に深刻な問題が生じやすく、自分に対して自信が持てない、周りに溶け込めない、周囲から仲間として扱ってもらえないといったネガティ ブな事が起きやすく、自暴自棄になったり、うつ傾向になったりしてしまうので、治療を受けることが重要です。
年 齢が上がるにつれて見かけ上の「多動」は減少するため、かつては子供だけの症状であり、成人になるにしたがって改善されると考えられていたが、大人になっ てもADHDで苦しんでいる人はいます。その場合は多動ではなく、感情的な衝動性や注意力や集中力の欠如が主な症状になります。「見えない障害」であるた めに理解者が得られないとADHDを持つ子どもや大人、そして家族は孤立してしまい、悩みを抱えて苦しむのです。
■ 原因
原 因ははっきりしていませんが、近年のMRIやSPECTなどの脳の画像診断による研究報告から、「脳の器質的・機能的な原因のために発達・成熟に偏りが生 じ、ADHDの症状が現れる」と考えられています。「親の育て方」や「本人の努力のなさ」にあるといわれることがありますが、大きな誤解。発症には、遺伝 的要因、出産時に生じた障害などによる脳の形態学的な異常、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなどの機能異常、環境的要因などが複雑に絡み合っていると 考えられます。
その他、関連性は十分に証明されていませんが、食事とADHDとの関連性について指摘する報告があります。2007年にイギリス政府は、食品添加物の合成保存料の安息香酸ナトリウムと数種類の合成着色料が子どもにADHDを引き起こすという研究を受け、これらを含むことが多いドリンクやお菓子に注意を促しています。2008年4月には、英国食品基準庁(FSA)はADHDと関連の疑われる合成着色料のタール色素(赤色40号、赤色102号、カルモイシン、黄色4号、黄色5号、キノリンイエロー)について、ガーディアン紙での報道では大手メーカーは2008年中にそれらを除去、2009年末までにメーカーが自主規制するよう勧告しました。
■ 治療
適切な薬物療法、心理療法、集中力を高めるように訓練する行動療法、環境調整、教育的な介入によってADHDによる問題行動は軽減しますが、適切な対応がなされないケースでは深刻な問題を引き起こすことがあります。
⑤ チック障害 Tic Disorder
突発的で急速な、反復性をもった、リズムなく繰り返されるパターン化した運動や発声で、1日に何度も起こり長期間継続する症状です。子どもの10~20%に何らかのチック症が見られるとされていますが、多くは一過性と考えられています。4歳から11歳ごろに発症することが多く、ピークは6~7歳、男子に多い障害です。
いくつかのタイプがあり、継続する期間が1年未満の「一過性チック症」や、1年以上継続する「慢性運動性チック症(または音声チック症)」、いくつもの運動性チックと音声チックを伴う「トゥーレット症候群」などがあります。
■ 症状
運動チック---顔面の素早い動き(まばたき、顔をしかめるなど)、首を振る、
腕や肩を振り回す、体をねじったり揺すったりする、自分の体
を触ったり叩いたりする、口の中を噛む、他人の身体や周囲の
ものなどにさわる、など
音声チック---咳払い、鼻をすする、短い叫び声、汚言症(罵りや卑猥な内容)、うなり声、ため息をつくなど
トゥレット障害---上記の2つに比べると重症で、声を出すチックと体を動かすチックの両方が同時に出てくる
もの。同時でなく、交互にだったら慢性のチックになります。症状が1年以上続きます。
■ 原因
一過性チックは、両親の過干渉などのストレスや、入学時などの緊張などの心因性がきっかけで発症すると言われています。トゥレット症候群は遺伝的なものを含め脳にあると考えられています。
■ 治療法
チックの動作を無理にやめさせようとしたり叱ったりすると、緊張によって症状が悪化することがあるため注意が必要です。学校などにもきちんと理解を求めることが大切です。一過性チックはほとんどの場合治療の必要は無く自然に治るため、気にしすぎずに生活させてあげましょう。
一方、トゥレット症候群の場合は難治で症状も強く、学校生活や日常生活に支障が出るため、薬物療法などで症状を軽減させます。周囲の理解が必要であると言う点では一過性チックと同様ですが、治りにくい病気であると言う点で、更なる努力が必要です。
⑥ 強迫性障害 OCD (Obsessive Compulsive Disorder)
かつては強迫神経症と呼ばれていた不安障害の一つ。発症年齢は平均すると20歳前後。若干、男性のほうが早く発症する傾向があります。女性では、結婚や出産など生活の変化を機に発症するケースが多くみられます。日本で行われた調査によると、男性の平均発症年齢は22歳、女性では24歳。これまでOCDは、子どもには少ない病気と考えられていましたが、現在では、1~2パーセント程度、10歳前後にも発症のピークが見られ、過半数の人が18歳以下に発症しています。
1994年にアメリカ、カナダ、プエルトリコ、ドイツ、台湾、韓国、ニュージーランドの4大陸7カ国で大規模なOCDに関する国際的な研究調査が行われました。その結果、台湾だけが0.7%と低かったのですが、全体をみれば、一生涯のうちOCDになる人は、2%前後いるということが判明。このことから、OCDは人種や経済状態、宗教、教育レベルなどの社会的な背景や文化的な背景に関係なく起こりうることがわかります。
自閉症だけでなく、チック、トゥレット障害などにも、重い強迫症状が併発することがあるそうです。
■ 症状
- 汚染&洗浄(例:トイレに行く度、自分が汚れてしまったと感じ、長い時間をかけて手洗いを行う)
- 加害&自分への危害(例:自分への危害が心配な人では、刃物がそばにあることで強迫観念が生じ、その刃物に触れていないのにけがをするのではと不安が高じる)
- 確認(例:玄関のドアを閉めたかどうか不安になり何度も確かめないといられなくなる)
- 正確さ&順序&対称性 への要求(例:ものの配置が必ず左右対称、まっすぐに並んでいなくてはいけない)
- 強迫性緩慢(例:頭のなかで強迫的な考えに延々ととらわれてしまい、一つひとつの動作が他人からは非常にゆっくりして見える)
- その他(例:あるイメージや単語、数字、音楽などが繰り返し頭のなかに浮かんできて、消すことができない)
■ 原因
最近の研究から、OCDは、脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンの代謝に関係があるということがわかってきましたが、正確にはわかっていないのが現状です。
■ 治療法
現代の医学である程度改善が見られているのは、薬物療法(選択的セロトニン再取り込み阻害剤「SSRI」)。
■ 進行すると・・・どうなるのか?
症状が強くなると強迫行為にかかわる時間が増え、通常の作業や行動ができなくなるので、学業や仕事にも深刻な影響が出ます。仕事や学校生活を続けるのが困難になることもあり、さらには引きこもりのような状態になる場合もあります。こうした生活全般への影響から、OCDの患者さんのなかにはうつ症状がみられる人もいます。
⑦ カタトニア Catatonia
かつては「緊張病」と言われ、統合失調症の合併症として知られた運動障害。 2000年、イギリスの精神科医Lorna Wing が自閉症との関連を報告して、 注目されるようになりました。 発症年齢は、思春期以降。自閉症と合併して発症する割合は、報告例が少ないため、医師によって見解が異なりますが、1%~6%と言われ、自閉症の軽度、重度など関係なく発症するようです。 「19~25歳までがピークで、以降、緩和する」という意見や、 「一度発症すると一生涯」という意見など。。。報告例が少ないため、医師によって見解が異なります。
■ 症状
- 「部屋を横切る」などの動作の途中で動きが止まる
- 逆にばねがはじけるように突然動く
- 手指をくねらせる
- 歩こうとしても前に進めず前後に行きつ戻りつする
- 運動の自発性が乏しくなる
■ OCD (強迫神経症)との違い
- 「汚れ・感染への不安・恐怖」などがある強迫観念
- 「手を何回も洗う・鍵を何回も確認する」などの反復行為
- 「考え・イメージ・数」などが、頻繁に思い浮ぶ強迫思考
・・・といった症状が、本人の意思に反して発症し、苦痛となるのが、 一般的に知られているOCD。 ただ、強迫思考は、本人の頭の中で行われているので、 それがOCDによるものなのか、カタトニアによるものなのか・・・ の区別は、非常につきにくいのです。 どちらも表面的には、行為にとても時間がかかってしまい、 緩慢(動作がゆっくりで遅い)と見られる症状ですので。。。 現代の医学では、明白に区別する基準がありません。
■ てんかんとの違い
突然発生するカタトニアの場合、てんかんとも間違えやすいですが、 てんかんとの違いは脳波に異常はないことです。
■ 原因
「統合失調症・気分障害・自閉症」など、合併する疾病によって異なりますが、いずれも何がきっかけで発病するのかは、未だ不明。
■ 治療法
現代の医学である程度改善が見られているのは、薬物療法か、電気けいれん療法(ECT)。しかし、完治させる療法はなく、いずれも試行錯誤状態。 ※動作が止まった際に、プロンプト(支援・手がかり)を与えれば、次の行動に移れることもあります。
■ 何もしないで放っておいたら、どうなるのか?
良くなっていくか、悪くなっていくか・・・ 個人によって異なるので、なんとも言えない感じです。「悪性カタトニアの場合、早期治療をしないと死亡する」 という専門家もいます。