預貯金 / 年金
Deposit and Saving / Pension
「MoneySense.ca」によると、カナダで大学入学前の18歳まで子どもを育てるのに必要な経費は、一人当たり $243,660(年間$12,825、月間$1,070)だそうです。これは、健常児の場合なので、障害がある場合は、その障害の症状によって、それ以上の必要経費もかさんでしまうのは避けられない事実です。親が働いてバリバリ稼げる間は、様々な助成支援制度と併用して、まだ何とかなるかもしれませんが、残念ながら、いつまでもその状況を維持していくことはできません。
その理由のひとつは、「助成支援制度の内容が子どもの年齢によって変化する」こと。特に「早期発見・早期治療開始」が理想とされている自閉症の障害では、支援内容の年齢差が大きく(Autism Fundingページ参考)、19歳以上の成人期を迎えると、それまで家計の強い見方だったいろいろな制度から(年齢制限のため)対象外扱いとなり、同じ生活スタイルを維持させようとするならば、実費で賄わなければいけなくなってしまうのです。もうひとつの理由は、誰にでもやって来る「老い」の問題。自立が不可能な障害児であれば、親はいつまでも見守っていかなければなりませんが、いずれは難しくなります。
そのためにも、子どもの将来を見据えて、少しでも安心・安全な生活が継続できるように、貯蓄や投資をしておく必要があります。
【預貯金/積立金】
■ Registered Education Saving Plan (RESP) ▶詳細 Service Canada
義務教育後の進学を考慮して、子どもの学費を貯蓄するための積み立て貯蓄口座。日本にはこのような積立制度はないので、単純に比較することは難しいですが、「子どもの将来の教育資金を積み立てる」という概要だけ見れば、「学資保険」のような感じです。Family plan/Individual (non-family) plan/Group planの3種類から最適なプランを選び、銀行や投資信託会社、ファイナンシャルプランニング会社などの金融機関で、積み立てる人 (Subscriber、一般的に親) と、受取る人 (Beneficiary、子供) の専用口座を開設。最長口座維持期間の36年の間、通常の貯金では得られない、「税金の優遇・政府からの奨学金や補助金(Canada Learning Bond/Canada Education Savings Grant/Additional Canada Education Savings Grant/Provincial Education Savings Incentives)」などのメリットを受けることができます。「開設時の子どもの年齢・開設期間・入金額」にもよりますが、補助金を効率よく得られる ようにRESPを積み立てると、生涯最高$9,200もの補助金を得ることができます。
障害児向けとして作られた制度ではないので、障害の有無によって内容に差が出ることはありませんが、障害があっても、義務教育後の進学を視野に入れている 場合、親御さんには非常に頼もしいプランです。子どもが進学しない場合であっても、下記の年金積立金を「RRSP」に移行したり、(兄弟姉妹がいれば)カ ナダ政府から受け取った補助金を譲渡することが可能です。他に兄弟姉妹がいなければ、補助金はカナダ政府に返済しなくてはいけませんが、入金した全額は 戻ってきます。ただし、開設当初から両親がSubscriberになっていれば、片親が亡くなっても、残った親が継続できますが、片親のみの Subscriberが亡くなってしまうと、RESP積立金はまず亡くなった人の資産として戻ってしまいます。Beneficiaryがいるのにもかかわ らず、RESP口座は解消しなければならないルールになっています。
■ Tax-Free Savings Account (TFSA) ▶詳細 Canada Revenue Agency
節税を目的として2009年より開始された預金口座。18歳以上のSIN(Social Insurance Number)を持つ個人であれば誰でも銀行で開設が可能。普通の貯金では、当然のことながら、預金金額や運用益(投資利益、キャピタルゲイン)に応じて 利子が課税されますが、このTFSA口座の場合、一人当たり年$5000までという制限はあるものの、生涯を通じて税が課されません。RRSP(下記)の 方が課税所得を減らせるので節税効果は高いですが、引き出しの際に課税されてしまいます。TFSAは引き出しの際にも引き続き非課税です。障害者専用口座 というわけではありませんが、例えば、RESP(上記)よりもTFSAのほうが簡単に現金化できる利点があるので、「RESPの補完貯蓄」としてや、 「RDSP(下記)申請は対象外の障害者の将来に備えた貯蓄」として検討してもいいかもしれません。
【公的年金】
■ Old Age Security (OAS) Pension ▶詳細 Service Canada
税収を財源にカナダ政府が支給する年金制度。保険料を払う必要はないので、収入額には関係なく、65歳以上(2023年4月からは67歳以上)になると支 給 されます。ただし「申請時にカナダ国籍 or 永住権の保持者であること、18歳以降少なくとも10年間カナダ国内に居住していること(現在の住所がカナダ国外である場合は、カナダを出国の際に、カナ ダ国籍 or 永住権の保持者であったこと、18歳以降少なくとも20年間カナダ国内に居住していた履歴があること)」という基準を満たす方だけが対象になります。通 常、64歳(2023年4月からは66歳)になると郵送される Service Canada からの書類にて申請手続きを行います。支給年金金額は、カナダの居住年数により異なってきますが、2013年現在の満額は「$546.07/月」です。ま た、低所得者には、課税対象外の Guaranteed Income Supplement (補充所得年金)が毎月支給されますが、毎年申請し直すことが必要で、収入の増減により支給額も変化します。
■ Canada Pension Plan (CPP) ▶詳細 Service Canada
いわゆる日本の国民年金や厚生年金。カナダ国内で年間3500ドルを超える収入を得る18歳以上70歳未満の労働者は、CPPの保険料を支払う義務があります。所得レベルに応じて決められた保険料は、給与所得者は雇用主と折半され、給与から自動的に差し引かれます。自営業者は全額自己負担で支払わなければなりません。 どのくらいの期間、どれくらいの金額をCPPに払ったかの積立額に応じて、退職後に受取る年金の金額が変わってきます。CPP の受給額は課税対象。支給額は毎年1月に物価変動に応じて調整され、受給者がカナダ国外に住んでいても支給されます。
※このCPP制度の中で、Canada Pension Plan Disability Benefits と呼ばれる「障害者年金」は、CPP の保険料を一定の期間支払った人が、事故などによる障害でいかなる種類の仕事にも就けない状態になった場合に支給される制度ですので、通常、先天的な障害 である発達障害者は対象外になる可能性が高いです。例えば、中軽度の就労可能な発達障害者で、「申請の時点からさかのぼって6年間のうち4年間(もうすで に、少なくとも25年間の支払いをしている場合は3年間)継続してCPP保険料を納めていて、長期間に渡る重傷な障害を負ってしまった」状況であれば、申請対象者として認められます。
【個人年金/預貯金】
■ Registered Disability Savings Plan (RDSP) ▶詳細 Canada Revenue Agency
カナダの全ての州で統一された政府公認の障害者のための積立基金。家族は勿論のこと、血縁関係のない友人でも、誰でも積立金に寄与することはできますが、受取対象になるのは、あくまでも「カナダに居住して、有効な Social Insurance Number (SIN) があり、医師によって提出された Form T2201, Disability Tax Credit Certificate がCanada Revenue
Agency (CRA) によって認知され、Disability Tax Credit
を受けている60歳以下の障害者」です。申込は、取扱いのある銀行や保険会社で、専用口座を開設します。
Canada Disability Savings Grant(年収が$87,123以下の世帯の場合、カナダ政府から積立金$1につき3倍の$3がもらえる助成)と、 Canada Disability Savings Bond(年収が
$25,356以下の低収入世帯の場合、カナダ政府から毎年$1000が20年間もらえる助成。年収が$25,356~$43,561の場合は部分助成)が特徴。口座は59歳まで開いておけますが、 GrantやBond支
給は49歳まで。さらに、口座開設から10年間経たずに引出してしまうと、せっかく政府からもらった助成金も返還しなければならないので、無駄にならない ように、予め最低10年は手をつけない長期スパンで計画をした方がお得です。積立金の年間限度額はありませんが、対象者が59歳になるまでの、一生涯を通
しての限度額は大よそ、$200,000と定められていて、引出さない限り、税の申告の際、収入と見なされないので控除されます。たとえ、生活保護申請が 必要になったとしても、財産の対象にもなりません。
口座を自己管理できない対象者は、法的に認められた親権者や擁護者が代わりに管理する ことになりますが、積立金の引出し手続きの際には、(たとえ肉親と言えども)法的に効力のある対象者からの委任状(Power of Attorney や Representative Agreement) が必要になります。
■ Registered Retirement Saving Plan (RRSP) ▶詳細 Canada Revenue Agency
名称がリタイ アメントとあるので、「老後の貯金」と想われがちですが、税金の高いカナダでの「節税を目的とした貯蓄」として、勤労所得のある71歳までのカナダの納税者であれば利用できます。RRSPの購入(=申込)は、取扱いのある銀行や保険会社で、専用口座を開設しますが、普通口座のように、「いつでも、いつまで でも、いくらまででもOK」というわけではなく、下記のような決まりがあります。
「いつ」→ 毎年度の入金締切日は、だいたい翌年の2月末~3月上旬
「いつまで」→ 71歳になる年の12月31日まで(71歳超のシニアはTFSAなら開設可能)
「いくらまで」→ 入金限度額は、タックスリターンの際にもらうNotice of Assessmentに記載 (その年の所得により変動があるので、個人により異なります)
購入額は、毎年の課税所得から控除され、貯蓄基金から生じた利息は引出さない限り課税されません。リタイアまで待たなくてもいつでも引出せますが、引出した 額がその年の収入として加算され、支払わなければいけない税金も増えてしまうことになるので、可能であれば、所得が低い年のタイミングまで待って引出す か、自然と所得が減り税率も低くなる老後に引出す方が、RRSP本来の目的である節税になるでしょう。税金を払うだけの所得がない人は、RRSPを買って も、税金が戻らないので有り難味がありません。そのような人は将来所得が増える年までRRSPの購入枠は、繰り延べておいてTFSAを買うのも選択肢として検討に値します。
こちらの制度も障害児向けとして作られた制度ではないので、障害の有無によって内容に差が出ることはありませんが、「RDSP(上記)申請は対象外で、一定 の勤労所得を得られる障害者」の場合はご本人名義で開設をしておけば「将来に備えた貯蓄」になります。また、「RDSP申請は対象外で、税金を払うだけの 所得がない障害者」のいる親御さんの場合、ご自身のRRSPの Beneficiary(受取人)をお子さんにしておけば、死亡時に残りのRRSP額をお子さんが相続することも可能です。
各種口座開設方法 & 注意点
STEP1--「RESP・TFSA・RDSP・RRSP」の
プロバイダー(取扱い機関) の選択
主な機関は下記の通り「銀行・投資信託会社・ファイナンシャルプランニング会社」など。銀行では、主に定期積立タイプとMutural Funds、投資信託会社やファイナンシャルプランニング会社では主にFundsを扱っています。
• TD Canada Trust Bank (支店により日本語対応可)
• RBC ROYAL Bank (支店により日本語対応可)
• BMO Bank of Montreal (支店により日本語対応可)
• Scotiabank
• CANADIAN WESTERN Bank
• CIBC
• VanCity
• FREEDOM 55 FINANCIAL(担当者により日本語対応可)
STEP2-- 手続き
子どもの SIN (Social Insurance Number) を取得後、担当者と予め予約を取り、
保護者と子どものID (パスポート・運転免許証・市民権証明書など)を持参。
担当者が用意した申請書に記入して手続き。
「契約内容・子どもの年齢(19歳以上)」によっては、 Representation Agreement ※(=障害がある子どもに代わって、その口座を管理できるようにする承諾書)という書類が必要になることもあります。
※詳細は、「成人後の生活」のページをご覧下さい。
※注意点※
上記の「RESP・TFSA・RDSP・RRSP」は、利用プランによって運用益の差はありますが、いずれも「投資」です。預けたお金を最大限に増やし ていきたい人は、「ハイリスク・ハイリターン型のプラン」、出来る限り減らしたくない人は、「元本保証に近いコンサバティブ型のプラン」といった感じで、 自分の経済状況・家庭環境・障害のあるお子さんの将来も考慮に入れたプラン選びが大切です。