【自閉症の原因 Risk Factors

 

③ 体内環境要因          
  Enteral Environment Factors
     

■グルテン/カゼイン Gluten/Casein

グルテン・カゼインフリー商品 Image:by Au Kirk CC BY-SA 2.1 JP
グルテン・カゼインフリー商品 Image:by Au Kirk CC BY-SA 2.1 JP

 

ノルウェーのオスロー大学カール・ライヘルト教授(Dr.Karl Reichelt)は、20年にわたる研究で、自閉症児の尿中のペプチド(麻薬様物質)の 排泄量が高く、その原因は小麦粉や穀物に含まれる「グルテン」と全ての乳製品に含まれる「カゼイン」が消化されない為であることを発見。『カゼイン・グル テン完全除去(GFCFダイエット)』する療法で、尿中のペプチドが減るとともに、言語学習能力診断検査が改善する『逆相関関係』を発表しました。

Two Candidate Genes for Autism Identified in NAAR-Funded Research Projects-Autism Speaks

 

消化酵素の欠乏の為、グルテンやカゼインが消化されずに、漏出の進んだ腸管を通って血流に入り込み、脳内のモルフィン受容体と呼ばれる所で反応します。グル テンとカゼインのペプチドがこのモルフィン受容体を刺激すると、「下痢・軟便・便秘・悪臭便・慢性の腹痛・ガス・下腹部の膨張等直接胃腸障害」を起こすだ けでなく、「感情・認識力・言語・学習・自閉症特有の問題行動(目のコンタクト、睡眠パターン、注意力の持続)」等にかなりの影響を及ぼすのです。(※実際に、自閉症児は、下痢・便秘などの胃腸にかかわる問題が、健常児の3倍以上発症しているそうです。

 

フロリダ大学ケード (Robert Cade) 教授も、少なくとも1年以上通常の治療(精神療法と薬物治療)で効果がみられなかった70例の広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群)に、カゼインとグルテンを除去する治療を1~8年間行い、「社会的隔離・視線接触,・緘黙症学習能力・活動過多・常同活性,・清潔状態・不安発作・自傷など」の症状の程度を判定しました。その結果、3ヵ月以内に57(81%)に顕著な改善が見られ、3ヵ月ですべての症状の改善がみられました。(この改善は、検査継続後1年間見られました。改善しなかった13(19%)のうち5人は、尿中の麻薬様物質の量が多いままで、自宅での家族による食餌療法のため、不完全であったと思われます。)

[PDF]No 38 Cade Autism and Schizophrenia Paper.pdf

 

また、英国サンダーランド大学自閉症研究部門主任教授のポール・シャトック博士(Dr.Paul Shattock)やGreat Plains Laboratoryのウィリアム・シャウ博士(Dr.WilliamShaw)らも同様に食品ペプチドと自閉症との関係を確認しています。

 

 

しかし、専門家には懐疑的な意見も多々あり、あくまでも民間療法の域を出ていません。日本の脳科学者の澤口俊之氏も「科学の世界ではGFCF食の有効性はほぼ否定されている。GFCF食の有効性は疑わしく、発達障害神話に近い。つまり、神話と断じるのは極論としても、この言説の信頼性の程度はかなり低い。」とオフィシャルブログで述べられています。

 

 

 ▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・食事療法・生物医学的療法・グルテン/カゼイン ダイエット」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

自閉症児の親は代替療法に頼る傾向に-健康美容EXPO

セレブの自閉症克服記-ADHD☆LD あんなこと こんなこと

自閉症/PDD - グレートプレインズ研究所

Gluten Free/Casein Free Diets for Special Kids-Special Learning

Autism Alternative medicine - Mayo Clinic

Gluten and Casein-Free Diet for Autism - HELP WITH

History of GFCF Diet Research - gfcf.com

澤口俊之オフィシャルブログ

澤口俊之公式サイト

 

 

■栄養/ミネラル/ビタミンの不足                         Insufficient Nutrition/Minerals/Vitamine

Image:by kanenas.net CC BY-SA 2.1 JP
Image:by kanenas.net CC BY-SA 2.1 JP

食事代替え療法で2番目に利用率が高い、サプリメントの服用。過去長年にわたり、栄養の補充が自然な形で自閉症の症状を改善する可能性が主張されてきました。全ての研究者がそのようなセラピー の化学的根拠の有無について合意しているわけではありませんが、多くの保護者及び医師からのサプリメント単体または複数を組み合わせての摂取により自閉症の症状に改善が見られたとの報告が増加しています。

 

血液や毛髪、他の組織中のビタミンA・ビタミン B 群(B6・B12)・C・D・E・マグネシウム(magnesium)・亜鉛・葉酸(folic acid)・オメガ3脂肪酸(omega-3 fatty acids)などを含む栄養素が自閉症児では明らかに低値であることがしばしば見られ、それらを補充の必要性を指摘しています。

 

中でも注目されているのが、ビタミンB群です。ビタミンB群は脳が必要とする酵素を生産する上で極めて重要な役割を持っているのです。ビタミンB群とマグネシウム(ビタミンBが効果的に働く為に必要)の経口補給により、言葉でのコミュニケーション、社会的交流、アイコンタクトの改善など。。。症状の改善が見られたとの多くの研究があります。

 

 

▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・食事療法・生物医学的療法・ビタミン/ミネラル補給」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

Assessment of Infantile Mineral Imbalances in Autism 

自閉症の病因-栄養医学研究所

あなたの子供を成功に導くCHQの法則/栄養のおはなし/京都南カイロプラクティック研究所

生物医学的療法と食餌療法の概要 - 世界の訓練グッズカタログiwant

米国で増える自閉症児、求められる代替医療 | 大和薬品株式会社

Gluten Free/Casein Free Diets for Special Kids-Special Learning

Autism Alternative medicine - Mayo Clinic

[PDF]自閉症スペクトラム障害の発症脆弱性と環境

[PDF]自閉症の環境要因 - 国立保健医療科学院

Combined vitamin B6-magnesium treatment in autism spectrum disorder.- A Brice

List Of Research For Magnesium As An Autism Treatment-Ultimate Autism Guide

自閉症スペクトラム - ミネラル検査で健康生活

 

 

■フェノール Phenol Benzenol への過敏反応                 硫酸化 Sulfation 不足

自閉症児には食品に含まれるフェノールという成分に過敏に反応してしまい、消化がうまく出来ず、悪影響をまともに受けてしまうケースも少なくありません。肝臓解毒作用で重要な役割を果たす PST (Phenol Sulfotransferase) 酵素システムと言われているものに関係しているのですが、硫酸塩イオンと結合することによって、有害なフェノールが体外に排出されます。

英国の研究者Rosemary Waringの調査によると、調査した自閉症児の半分以上の子供のPST酵素システムが適正レベルに達していなかったそうです。これは実際にはPST酵素自体の不足の為ではなく、むしろ血流内の硫黄不足の為。体内に硫酸塩が不足するとPST酵素システムが十分な機能する為の硫酸塩イオンが生成されないのです。従って、フェノール成分が排出されずに脳や神経系の中に堆積してしまい、それが神経伝達作用を阻害され、結果、行動、気分や神経機能に異常をきたすことになるのです。

更に、この硫酸化のプロセスは普通消化機能を支えるペプチド、胆汁酸、CCK, 分泌性IgA,やセクレチンに必要不可欠なものなので、この硫酸化不全も自閉症児の消化不良や吸収不良の原因の一つかもしれないと言われています。単に胃腸障害や食品アレルギーを治す為だけではなく、肝臓の解毒経路をきちんと機能させることが大切です。


▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・食事療法・生物医学的療法・硫酸化/フェノール」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

フェノール-発達障害(自閉症)の症状を少しでも軽減させたい日記~自閉症の治療~

硫酸化不足 - 世界の訓練グッズカタログ『IWANT』

自閉症児にみられる胃腸障害の簡単な定義 - 世界の訓練グッズカタログ『IWANT』

Sulfation - National Autism Network

Sulfate (PST) - Autism Canada Foundation

Phenols/Salicylates | Healing Autism & ADHD

 

 

■胃/腸内環境 Gastrointestinal Environment

「体のあらゆる器官をコントロールしてくれいる部位」は ”脳” で、「身体に不必要なモノを排泄する、単なる便が通過するための臓器」と考えられていた“腸”でしたが、1980年代、アメリカのコロンビア大学医学部 解剖細胞生物学教授マイケル・D・ガーション氏が

  ・脳に存在し、精神を安定させる神経伝達物質『セロトニン』の95%が腸で作られること

  ・腸だけが、脳や脊髄からの司令がなくても反応をおこさせる神経系を持つこと

を発表。「腸は第二の脳である」という学説は、それまでの常識が覆えり、腸の中にも沢山の神経細胞が存在し、部分的に脳と同様の機能もあることが証明されたのです。

「テストで緊張して、おなかが痛くなる」「旅行に行ったら便秘になった」といった話は、まさに、脳で芽生えた感情と、腸の活動が密接にリンクしているからなのです。そして、最近の研究では、腸内環境の悪化は、便秘や下痢、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患といった肉体的疾患だけではなく、精神疾患である「自閉症」とも関連性があることが分かってきました。

 

Image:by kaibara87 CC BY-SA 2.1 JP
Image:by kaibara87 CC BY-SA 2.1 JP

バクテリア  Probiotic

 

腸内細菌は、下記の3種類で、バランスは2:1:7が理想です。

 

 [善玉菌]ビフィズス菌(乳酸菌):20%
 乳酸や酢酸、酪酸などの有機酸を作り、腸内を酸性に保つ。

 有機酸は腸から吸収されて体のエネルギーとなり、

 酸は腸を刺激して便通を促す。

 

 [悪玉菌]大腸菌、ウェルシュ菌など:10%
   善玉菌が20%ある時は、働きが抑制。悪玉菌が増えると

 毒素やガスを作り、病気の原因となる。

 

 [日和見菌]その他の微生物群:70%
   善玉菌が20%ある時は大人しいが、悪玉菌が多くなると強調

   して有害物質を作り出す危険性がある。

 


アメリカのグレートプレインズ研究所が、自閉症の子どもの尿を検査したところ、腸内に生息する細菌「クロストリジア (clostridia bacteria)」の副生成物『HPHPA』 が、平均よりも非常に高いことが判明。子ども達にクロストリジアの増殖を抑える抗生物質を投与すると、自閉症の症状が大きく改善されたそうです。

 

ボストンの精神科医 Dr James Greenblatt も同様に、尿検査で『HPHPA』値が高かった 重度の強迫性障害 (OCD) と注意欠陥・多動性障害(ADHD)、消化不良がある10代の少女に非常に強力なプロバイオティクスと抗生物質を投与。腸内の良い細菌を増やす治療を行ったところ、『HPHPA』値は劇的に下がり、治療開始6カ月後には、精神疾患の症状が改善されはじめ、1年後には全く見られなくなりました。3年が経った現在でも、再発もなく、普通高校に通学しているそうです。

 

このように、精神疾患の原因は複数あるため、腸内環境の改善だけで治癒するとは限りませんが、症状が大幅に緩和されるケースもあります。しかし、全ての患者に必ず効き目のある「万能薬」ではないようです。腸内細菌のパターンは、人それぞれ。顔や性格のように、1億人いれば1億のパターンがあり、ある特定の菌だけが強くなっても、かえって「臓器」と しての機能を乱してしまう結果になりかねません。1000種類もある腸内細菌のバランスを考慮しなくてはいけないのも、プロバイオティクスによる治療を困難にしている理由のひとつかもしれません。 

 

Image:by Iqbal Osman1 CC BY-SA 2.1 JP
Image:by Iqbal Osman1 CC BY-SA 2.1 JP

酵母菌(イースト)Yeast

 

1995年、カンザスのウィリアム・ショー博士(Dr.William Shaw)が、自閉症も含む異常な症状のある患者の尿を検査して、「菌性の代謝産物(イーストの老廃物)」の割合が 異常に高いことを発見し、「The Journal of Clinical Chemistry Vol.41, No.8」で発表しました

 

抗生物質や水銀、その他の重金属過度な摂取などの原因から、酵母菌が過剰に繁殖し、腸壁に付着。すると、酵母菌が分泌した酵素で腸壁に傷ができてしまいます。その傷を通して・・・

 

異物(タンパク質)が侵入

   腸内環境が悪化

              ⇩

       消化機能が低下

              ⇩

       タンパク質をアミノ酸まで分解することができないので「異物」の全体量が増える

              ⇩

       侵入のリスクが更に増える

 

カンジダ菌腸が侵入

       腸管がもれる症状を促進

              ⇩

       グルテンやカゼインが分解される前に血流に流れ出す

 

といった、悪影響が脳にダメージを与え、自閉症や精神疾患特有の行動を誘発しているのでは・・・と考えられています。

 

酵母菌が繁殖すると、個人差はありますが、下記のような症状が出る場合があります。

 

言葉数が少ない / 多動 / 意味のない笑い / 叫ぶ / 睡眠障害(夜中に起きたり、なかなか寝ないなど)
つま先歩き(便がペースト状、便秘に多い)/ かんしゃく / 攻撃的行為 / 物を口に入れる
スティミング(手をひらひらする、意味のない音を発するなどの常同行動)/ 頭痛 / 下痢
自傷行為(頭をぶつける、叩く)

 

酵母菌はやっかいなもので、時に検査でも発見されなかったり、一見健康そうな便にも酵母菌が見られる場合もあるようですが、実際に、自閉症をはじめ、ADD/ADHDを持つ子ども達にカンジダ菌の治療をしたところ、問題行動や集中力に改善が見られたケースも沢山いるそうです。

 

 ▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・食事療法・生物医学的療法・酵母(イースト)Yeast」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

Yeasts and Fungi: How to Control Them By Dr. William Shaw

Autism Treatments: Anti-Fungal Treatments

Autism and Yeast Overgrowth - BioActive Nutrients

What Is Yeast Overgrowth? - Talk About Curing Autism
Medical Testing for Autism, Asperger's Syndrome, and PDD-Autism Asperger's Digest

精神疾患の原因が腸内環境の検査でわかる?自閉症と腸内環境

 

 

消化酵素/亜鉛の欠乏 Deficiency of Digestive Enzymes/Zinc

 

自閉症児にはある種の消化酵素が不足していたり、働きが正常でなかったりすることがあり、その結果、消化不良と吸収不良が起こり、胃腸障害を引起こします。

 

消化不良の状態では、最高の食事をしていても、腸管から栄養素がきちんと摂取されていないので、栄養不良となってしまうのです。消化不良の原因は、通常、胃酸や膵臓の酵素のような消化液の欠乏といわれています。また、消化機能に問題無く、食物がきちんと消化されていたとしても、上記の「酵母菌」での腸壁の損傷、または炎症で、栄養素が腸管から血流に吸収されていなければ、やはり栄養不良になってしまいます。

胃酸や膵臓の酵素等の消化分泌液の欠乏は多くの自閉症児の抱える問題に深く関わっています.例えば膵液はO157菌や赤痢菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌等の腸内細菌(有機体生物)に対する抗菌性が高く、特に膵臓の分泌液はカンジダ菌に対する静真菌作用があります。だからこれが不足すると腸管は病原菌の過剰繁殖が起り易く、感染し易くなるのです。

吸収不良は下痢、ガス、腹痛等の胃腸障害だけでなく体全体に色々な問題を引き起こします。栄養素の一つだけが欠乏しても病につながる深刻な影響を及ぼすのです。

この一つの例として亜鉛の欠乏があります。亜鉛欠乏症は血漿中の亜鉛濃度で測定するのですが腸の炎症によりよく起るものです。亜鉛が不足すると正常の細胞の 免疫力が弱まり、病原菌やウイルスに感染し易くなります。この様な腸内感染によって下痢になったり、更に一層の栄養吸収不良を促して栄養失調を起こすので す。

亜鉛は体内の重金属を一掃する作用のあるメタロチオネン(metallothionein)という酵素の合成を誘導する重要な役割を担っています。だから亜鉛が欠乏すると重金属や毒性遊離物質の害を受け易くなります。また亜鉛は免疫システムにとって重要な栄養素なのです。亜鉛を栄養補給すると風邪の回復が早まり、風邪ウイルスのラインウイルス(rhinovirus)による気道の炎症を抑えます。また、発育期に亜鉛が欠乏すると、「学習、記憶や注意力の発達に悪影響を及ぼし、動作が緩慢になったり, 反応が遅くなる」という興味深い自閉症児の研究結果が知られています。

 


 ▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・食事療法・生物医学的療法・消化酵素/亜鉛の補給」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

幼児期の亜鉛欠乏:自閉症スペクトラム障害との関連

亜鉛テスト - グレートプレインズ研究所

亜鉛 - アメリカ発 「Autism is Treatable ~自閉症は治療可能 .

ネイチャーWEBジャーナルに掲載、幼児期の亜鉛不足と自閉症

 

 

■オキシトシン不足 Deficiency of Oxytocin

Image:SpecialNeeds.com
Image:SpecialNeeds.com

オキシトシンは、ホルモンの一種で、一般的に、出産の時に子宮(筋)を収縮させる作用や、乳汁を出しやすくする(射乳)ための分泌促進作用があり、さまざまな医学的場面で長い間使用されてきました。

 

しかし、「愛とはどのような性質をもっているのか」を長年に渡って研究してきた科学者達は、オキシトシンが人間の幸福感とも深く関わってることを発見し、2005年11月22日付「米国立科学アカデミー紀要」(Proceedings of the National Academy of Sciences)にて米ウイスコンシン大学のセス.Dポラック博士(Seth D. Pollak)らによって正式に発表されました。

 

脳の働きが異なる二種類(家族型と単独行動型)のネズミの実験を繰り返した結果、家族性ネズミの方が、単独行動型のネズミよりオキシトシンのレセプターの多いことが発見されたのです。生まれたばかりの赤ちゃんを親と引き離した場合、この二種類のネズミの行動には歴然とした違いが現れます。オキシトシンレセプターの少ない単独行動型の母親は赤ちゃんに無関心です。赤ちゃんもあまり母親への執着は強くありません。一方オキシトシンレセプターの多い家族性ネズミの方は母親は赤ちゃんが心配ですぐに駆けつけて保護します。赤ちゃんも懸命に乳首にしがみつきます。

この現象は、ネズミだけではなく、人間の子供にも顕著に表れ、親の愛情を多く受けた子供の「オキシトシン」量は、母親の愛情を受けずに育った子どもに比べて高かったというデータがあるのです。動物には本来自分以外の生き物を恐れる原始的な本能があります。オキシトシンはこの不安をうち消して、親子の強い結びつきを生み出す役割をしていたのです。その効果は母と子だけではなく、夫婦・恋人同士あるいは友達同士の結びつきにも密接に関連しています。別の実験では「オキシトシン」をスプレーして、それを吸い込むと他人を簡単に信じてしまうという結果が報告されています。

 

この結果からオキシトシンには相手を信用したり、共感させたりする働きを持つことがわかりました。逆にオキシトシンが少ない人は猜疑心が強く協調性に欠けるということです。人間関係を円滑にし、他人との心理的境界を健全に保つ能力に関係があるだけでなく、緊迫した状況でのストレスを軽減させる働きがあるようです。

 

そして、このオキシトシン不思議な作用に注目したのが、金沢大学医学部子どものこころの発達研究センター長の東田陽博教授と同センターの棟居(むねすえ)俊夫特任准教授らの研究グループです。オキシトシンの分泌に「CD38」という分子が欠かせない事を発見。CD38に異常があり、自閉症や広汎性発達障害(PDP)、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LDADDの症状をみせている患者に対してはオキシトシンを投与する治療法が有効かもしれないと浜松医科大や大阪大などとの共同研究結果として2010年4月、発表しました。オランダの科学誌ニューロサイエンスリサーチ5月号に掲載されました。

[PDF]自閉症にオキシトシン有効、金沢大学で確認-金沢大学

最新医学論文53 - 連合小児発達研究科 金沢校 - 金沢大学

オキシトシン使用報告 - 金沢大学子どものこころの発達研究センター

 

 

しかしながら、オキシトシンの自閉症者への投与は、期待はされているものの、まだ有効性がしっかりと確認されているわけではありません。そして何より、安全性(リスク)についても今後十分に検討される必要があります。特に知的障害を伴う自閉症児・者の場合、体に何か不調があっても周囲にうまく伝えられないことが多くあります。これまで、テトラハイドロバイオプテリンやセクレチンなどなど、自閉症の特効薬として期待された薬物が次々と現れて騒がれましたが、結局どれも期待された効果がないことが判明して消えていっています。未知の薬剤の投与には特に慎重になった方がよいと思います。

 

 ▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・薬物療法・オキシトシン」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

自閉症:オキシトシンは「他人の心を読む」のを助ける

北國新聞  

nature news

PNAS:論文の要約

US News and World Report  

 

 

■セロトニン/ノルアドレナリン/ドーパミン不足                 Deficiency of Serotonin/Noradrenaline/Dopamine

健常者と自閉症の人の脳の断面写真。「セロトニン」の密度が低下していると、暗く見える Image:毎日jp 2010.1.5
健常者と自閉症の人の脳の断面写真。「セロトニン」の密度が低下していると、暗く見える Image:毎日jp 2010.1.5

 

この3つは、体内で特に重要な役割を果たしている三大神経伝達物質と言われ、人の心と関係し、重要な働きをする物質です。

 

 

セロトニン

体温調節、血管や筋肉の調節、攻撃性の調節、運動、食欲、睡眠、不安などに関わり、ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある物質です。セロトニンが不足すると精神のバランスが崩れて、興奮や衝動のコントロールが難しかったり、うつ病を発症しやすくなったりします。自殺者数の増加、キレやすい未成年の増加について、セロトニンの不足との関わりが指摘されています。

 

浜松医科大精神神経医学講座の森則夫教授らを中心とする研究グループが201015日、厚生労働省内で記者会見を開き、「自閉症の人の脳の中では、神経から神経に情報を伝える化学物質を回収し再利用するタンパク質「セロトニン・トランスポーター」が少なく、神経機能が低下していることを初めて確認した」という研究結果を発表、米専門誌「Archives of General Psychiatry」に掲載されました。

精神医学|国立大学法人 浜松医科大学


森教授らは、薬物療法を受けたことのない自閉症者と健常者18~26歳の男性20人の脳を頭部専用PET(陽電子放射断層撮影)スキャナーで撮影し、比較分析。その結果、自閉症の人 の脳全体では、「セロトニン神経」の働きを調整するたんぱく質「セロトニン」の密度が健常者と比べて低下しており、「セロトニン神経」が正常に働いていないことが判明したそうです。(研究者達は自閉症をもつ人々全体の約3分の1のケースで血流中のセロトニンが高いレベルで存在することを発見。)

 

また、脳部位の「帯状回」でセロトニン神経の働きが弱まると「相手の気持ちが分からない」との症状が強まり、「視床」でのセロトニン神経の働きが弱くなると同じ行動などを繰り返す「こだわり」の症状が強まるなど、症状の重症度と「セロトニン」密度との相関があることが確認されました。

 

  

ノルアドレナリン・ドーパミン

自閉症は、セトロニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの分泌異常と関係があります。

 

ノルアドレナリンは、人間を覚醒し活発にさせる神経伝達物質。脳内の危機管理センターの役割をし、危険を察知し、精神を戦闘状態にさせる警告ホルモンです。怒ったときに特に多く分泌されます。体内濃度が少ないと、小さな刺激に対しても過敏に反応し、逃避反応をするようになり、脳の拡大を停滞。不安神経症やパニック障害を引き起こすといわれています。脊髄の中で消去効果が消失すると、こだわりが強くなるのです。

一方、ドーパミンは、快感を求めて行動を起こす時の原動力。意欲を高めてくれますが、暴走すると際限なく満足できない状態になり、依存症を引き起こす原因のひとつといわれています。また、攻撃性、創造性、運動機能などを調節する働きがあり、過剰に消費されると、幻覚や幻聴、妄想などが生じ、分泌が少ないと、うつの状態になってしまいます。「多動やパニック、甘え、独り言や、右利きか左利きかはっきりしない 、「おかえり」と「ただいま」を逆に言ったり、「もらう」と「あげる」を反対にとらえたり、「バイバイ」の手が、手の平を自分のほうに向ける」などの自閉症特有の認証の逆転は、ドーパミンの不足と関係しているとも言われています。ドーパミンの異常は遺伝によるものですので、環境との関連性はないようです。

 

セトロニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの分泌物は、睡眠中に分泌されます。眠りが深いノン睡眠の時には、セロトニンが分泌され、眠りが浅いノンレムの時には、ノルアドレナリンとドーパミンが分泌されます。昼起きて、夜眠るという規則正しい生活リズムをすることで、自閉症に大きな改善がよくみられます。

 

 ▲療法の詳細は・・・「自閉症の治療・薬物療法・セトロニン・ノルアドレナリン・ドーパミン」を参考▲

 

 

【関連/引用/参考サイト】

発達支援ひろがりネット 

共同通信

とちぎ発達障害研究会(TODDS)

精神医学|国立大学法人 浜松医科大学

[PDF] 自閉症 - 浜松医科大学精神

 

 

2014年

7月

07日

乳酸菌菌体が示す新しい可能性 乳酸菌 Lactobacillus gasseri CP2305株の菌体自体が整腸効果を生み出す原動力であることを確認【JAPAN】

(PR TIMES) - リリース発行企業:カルピス株式会社

日本睡眠学会第39回定期学術集会(7月3~4日/徳島)で発表
カルピス株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:山田藤男)発酵応用研究所は、カルピス社保有の乳酸菌Lactobacillus gasseri CP2305株(以下、L.gasseri CP2305株(「プレミアガセリ菌」))による発酵乳を用いた清涼飲料水の摂取が、脳腸相関*を通じて整腸効果をもたらすことを確認しました。これらは、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部ストレス制御医学分野 六反一仁教授との共同研究の成果で、日本睡眠学会第39回定期学術集会にて発表しました。

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2014年

5月

09日

Increased prevalence of GI symptoms among children with autism confirmed【USA】

A new study conducted by researchers at Marcus Autism Center, Children's Healthcare of Atlanta and Emory University School of Medicine indicates that children with autism spectrum disorder (ASD) are more than four times more likely to experience general gastrointestinal (GI) complaints compared with peers, are more than three times as prone to experience constipation and diarrhea than peers, and complain twice as much about abdominal pain compared to peers.

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2013年

9月

20日

「腸内環境を整えることが精神疾患や自閉症の改善に効果あり」という研究結果【USA】

意外なものが精神疾患や自閉症の症状に大きな影響を与えることが判明した。それは「腸内環境」である。

これまでのいくつかの研究によると、ヨーグルトや納豆に含まれ、腸内環境を整えることで知られる「プロバイオティクス」を摂取することで、精神疾患の症状が大きく改善されることが判明したそうだ。腸内環境と脳は密接にリンクしているというのである。

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