自閉症の人生:それはあなたが考えているものとは違う

Doctor Stu's Science Blog:コーヒーカップがカチンと鳴る音が、時計台が鳴る音より大きい世界を想像してみてください。道行く人のつぶやきが、ワールドカップの歓声より大 きいところを想像してください。あるいは、電気スタンドが太陽より明るかったり、腐った魚の匂いが一日中つきまとったりするのを...。これが感覚過敏の 世界です。

自閉症の人生がどんなものか、ちょっと想像できないでしょう。「自閉症」と聞くと、1980年代の映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じ たキャラクターを思い出すかもしれません。彼は社会的ひきこもりで、知的には天才でした。あるいは、叫んだり、体を揺すったり、頭を振り続けている哀れな 子どもをイメージするかもしれません。過度に単純化されたこうしたステレオタイプは、自閉症がいかに多様性に富んでいるかを示しています。自閉症とはひと つの状態ではありません。状態の「スペクトル」なのです。これが、自閉症が「自閉症スペクトル障害(ASD)」と呼ばれようになった理由です。英国では 100人に1人がASDと診断されています。つまり、あなたの知り合いでの中にも自閉症の人がおそらくいます。たとえあなたが気づいていないかったとしても。

 

自閉症の人は馬鹿ではありません。ちょっと見ただけでは自閉症の人を見分けることはできないでしょう。自閉症は「隠れた能力障害」とも呼ばれます。この症状をよく表している言葉です。

 

自閉症の人の中には、学習障害やコミュニケーション障害を抱えてる人もいます。しかし、高い知性を持ち、仕事で成功している人もいます。映画みたい な特殊な能力を持った人は非常にまれです。ASDのすべての人に共通することは、社会生活の困難さです。人の言葉を文字通りに受け取ってしまったり、しぐ さの意味を理解できなかったり、場の雰囲気が読めなかったりします。自閉症の人の多くが、世界を全く違ったように経験しています。「感覚過敏」に苦しむ人 たちもいます。すべての感覚が極限まで敏感になり、ちょっとした音、目に入る情景、匂いが、苦痛に満ちた大混乱を引き起こします。子どもが自閉症的「かん しゃく」を起こすのは、注意を引くためではありません。突如として苦痛の固まりとなった世界から、なんとか逃れようとする痛ましい試みなのです。


彼らが見ている世界は違うと認め、尊重する


自閉症は、一生にわたる症状です。治療法も原因もわかっていません。しかし、自閉症の人たちが生きやすくなるために、私たちができることはたくさんあります。アスペルガーと呼ばれるタイプの自閉症をもつルーシーという女性の例を見てみましょう。

 

彼女は、学問的な才能に恵まれた女性です。厳格な日課を持ち、興味の対象は限定され、身体的に不器用で、社会的困難を抱えています。ある日、彼女は 病院を訪れました。看護師による問診を受けたあと、「外で座ってお待ちください。医師がすぐに参ります」と告げられました。ルーシーさんはその言葉を文字 通り受け取りました。数時間後、病院の守衛が発見したとき、彼女は待合室ではなく、病院の外にある公園のベンチに座っていました。

 

ルーシーさんの事例が示すように、自閉症の人に対して、シンプルで明確な言葉を使えば、誤解の多くは避けられます。彼らは、無口で、無作法で、思い やりのない人間に見えるかもしれません。しかし、大抵は、社会のエチケットが身についていないだけです。パニック的な攻撃性、暴言、異常な行動は、恐怖と いうよりは痛みの表現です。自閉症の人にとって、世界を別の視点で見ることは大変難しいことです。そして、私たちができる最良のことは、世界を別の視点で 見ることです。自閉症の人が生きている世界は、私たちが感じている世界とは違うことを認め、そのことを尊重するのです。

 


【News Source:2014.8.10 マイナビニュース

Life with autism: it's not what you think|Doctor Stu's Science Blog