【ひと】銀座で自閉症の画家が個展…迷いのない絵に感動と勇気【東京】

太田宏介さん(右)と兄の信介さん。作品はアクリル画「マウンテンゴリラ」=千代田区
太田宏介さん(右)と兄の信介さん。作品はアクリル画「マウンテンゴリラ」=千代田区

自閉症の画家、太田宏介さん(32)=福岡県太宰府市=の個展が28日から、中央区銀座の柴山画廊で開かれる。ゾウやカメ、ゴリラ、花などをポップに描いたアクリル画から水彩画まで40点が並ぶ。宏介さんは、2歳で重度の自閉症と診断された。小学5年のとき、指先の器用さに着目した母親と自宅そばの造形教室を訪問。粘土細工から始め、着色で絵筆に慣れ、描き始めた。

 

15歳の初個展以来、ファンが増え、今月初め、福岡市の福岡アジア美術館で開かれた「自閉の画家 22年の軌跡展」は、2500人が来場する盛況ぶりだった。宏介さんの活動を支える強力な助っ人が兄、信介さん(39)だ。「幼い頃からかわいかった。でも、障害者が家族にいるって友達に言えなかった」と打ち明ける。

 

28歳のとき、会社の上司と同僚を思い切って個展に誘った。「いい絵やなあ」「何で言ってくれんかったと!」。知人の反応に「弟にできて僕ができないことがいっぱいある。障害の有無に関係なく、画家として感動や勇気を与える弟はすごい」と思えたという。

 

今は脱サラし、宏介さんの作品の展示や企業向けデザイン提供事業に専念中。来秋、ニューヨークで個展を開くのが夢という。「弟はストレスなく生きて いるから、心がきれい。絵も迷いがない」「母はいつも、『障害者は必ず特性がある。それを見つけるかどうかで人生は変わる』と言う。弟たちには、健常者に はない集中力がある」

 

個展ではTシャツなども販売。Tシャツは、日本野鳥の会が今年、創立80周年記念に絵を公募し、宏介さんのルリカケスが「鳥は力強い足を持った恐竜の子孫だと思い出させてくれる」(選評)と最優秀賞に輝いた。6月2日まで。

 

問い合わせは太田信介さん(電)090・8357・9139。(牛田久美)

 

【News Source:2014.5.28 産経ニュース