アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は3月28日(米国時間)、2010年時点で、アメリカに住む子供の68人に1人が自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されたと発表した。
この68人に1人という数は、CDCが2012年に発表した2008年時点の数値と比べて約30%も高い。このときの調査では、88人に1人の子供がASDだとされていた。
今回の報告書は、2010年にCDCが11地域に住む8歳の子供のカルテや学習記録などを調査した結果、1000人あたり約14.7人がASDと診 断されたと述べている。ただし、地域によって多少の違いがある。たとえば、ニュージャージー州では45人に1人が自閉症と判断されたが、アラバマ州では 175人に1人と少なかった。
全体的に見ると、今回のレポートは過去の傾向を再現しており、女児よりも男児のほうがASDの子供が5倍多かった。男児は42人に1人がASDだっ たが、女児では189人に1人にすぎない。また、白人の子供は、ASDと診断される割合が、黒人やヒスパニック系の子供より高かった。
CDCの「自閉症と発達障害の評価ネットワーク」 がアメリカで自閉症の追跡調査を始めたのは2000年のことで、この調査にはカルテと学習記録が利用されている。初期の調査では、自閉症とされた子供は約 150人に1人だったが、その後調査するたびに、この数は着実に増えていった(2013年にCDCが公開した別のレポートでは、アメリカに住む子供の50 人に1人がASDだと推測されているが、これは保護者からの報告に基づいた調査であり、公的な記録を調べたものではない)。
自閉症やASDはどうして急増しているのだろうか。自閉症の啓発に努める非営利団体Autism Speaksで主任科学者を務めるロブ・リング氏がまず指摘するのは、自閉症の診断基準であり、長年にわたって改訂が行われているDSM(精神障害の診断と統計の手引き)の1994年版「DSM-4」で、アスペルガー症候群が自閉症に加えられたことだ(それまでは「2000~5000人に1人」とされていた自閉症が、DSM-4以降、20~40倍に増加した。なお、2013年の「DSM-5」では、アスペルガー症候群はASDに包括された)。
リング氏はさらに、「(自閉症に関する)意識が確実に高まっているため、家族が早い段階で行動を起こし、(中略)早い年齢で専門家に疑問を投げかけるようになっており、そのことも発見の可能性を高めている」と米ハフィントン・ポストに対して述べている。
ほかにも、「親の年齢が上がると、(自閉症の子供の数が)やや増える可能性のあることがわかっている」とリング氏は指摘する(40歳以上の父親から生まれた場合、30歳未満の父親の場合の約6倍、30~39歳の父親と比較すると1.5倍以上とされる)。「遺伝と環境の間で起こる興味深い相互作用が、科学によって明らかになってきている」
医学の進歩によって、現在では、2歳時点でASDの診断が可能だ。ただし今回の新しいレポートによれば、ほとんどの子供は4歳以降に診断されるケー スが多かったという。「こうした子供は、初期の重要な対応を受けられなくなってしまう。初期の診断が非常に大切だ」とリング氏は述べている。
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