発達障害積極受け入れ・村山中藤保育園「桜」【東京】

思い通りにならないとパニックになったり、いつもぼんやりしていたり――。武蔵村山市の認可保育所、村山中藤保育園「桜」では、こうした発達障害を抱えた子どもたちを積極的に受け入れている。支援のため徹底するのは、保育士間の情報共有だ。「サポートがきめ細かい」と、保護者の支持を集めている。

園児たちがクリスマス会に向け、演劇の練習に取り組むなか、一人離れて端っこで遊ぶ男児がいた。落ち着きがなく、長い時間、一緒に演技するのが難しいという。「楽しいよ。一緒にやろう」。温かく見守る園長や保育士の言葉に、男児は笑顔で応え、演技をする園児の輪に加わった。

 

同園では認可施設となった1969年以降、障害の有無にかかわらず、子どもたちを受け入れている。運営する社会福祉法人の理事長で、元園長の高橋保子さん(79)は、「生きる力は、どの子どもも平等に持っている。多くの園児の輪の中にいなければ、生きる力は育たない」と話す。現在、園児約240人のうち約1割が障害があるか、その可能性があるといい、大半が発達障害とみられるという。

 

保育士たちは週に1回、集まって、支援が必要な園児の様子を報告し合い、議事録にまとめている。内容は、興味が偏っている、言葉のオウム返しが多いといった課題と対処法、目標の達成度など。担任制を導入しているが、他の保育士も携わる機会があるため、全員が把握する必要があるという。入園前に、園児の主治医に園内を見てもらい、保護者を交えて保育方針などを相談する場合もある。

 

また、年に1度、専門家を招いた数日間の研修も行い、「アスペルガー症候群」や「自閉症」をテーマに、園児との関わり方などを議論している。高橋さん自身、園長となってまもない頃、行動が不自然な子どもに出会い、東京大学の研究室に通って発達心理などを学んだ。「障害のある子どもをただ預かるだけではプロではない。“心”を感じて手助けすることが大切」と力説する。

 

自閉症の男児(4)を通わせている両親は、「育ちやすい環境が子どもを変えてくれた」と口をそろえる。以前の保育所では、「座りなさい」などと行動を強いられることが多かったが、同園では、男児の意思を尊重し、行動をありのまま受け止めてもらっている。次第に、周りの園児と触れ合い始め、感情を表に出すようになった。

 

高橋さんは「小学校で普通学級に進学する園児もいる。子どもが自ら殻を破り、成長していく姿を見るのが何よりの喜び」と語る。