米最高裁、IQを極刑の判断基準とすることの是非を判断へ【USA】

米連邦最高裁は2002年に知的障害者への極刑を違憲とする判決を下したが、死刑に処すべきかの判断基準として一部の州が一定の知能指数(IQ)の値を採用していることが適切かどうか見直す方針であることを明らかにした。最高裁はフロリダ州の受刑者からの請求を受け、同州のIQ基準が憲法に違反していないかどうかを判断する。フロリダ州は、融通の利かないIQ基準を採用している州の1つだ。

このIQ基準が問題になったのは1978年に当時21歳で妊娠7カ月だったカロル・ハーストさんが殺害された事件だ。ハーストさんはフロリダ州リーズバーグのコンビニエンスストアの外で誘拐され、性的暴行を受け銃で撃たれた。2人の男が殺人罪で有罪判決を受けたが、そのうちの1人が、今回の請求を行ったフレディー・リー・ホール受刑者だ。

 

最高裁へ提出されたホール受刑者の請求によると、鑑定人は同受刑者が日常生活に必要な読み書き能力に欠け、短期記憶力も小学1年程度で、IQテストの結果は60だと証言している。下級審の裁判官はホール氏に知的障害があることを認めたが、犯罪の凶悪さなど刑を加重すべき要因が減刑すべき要因に勝っているとして死刑を言い渡した。

 

ホール受刑者の主張が数十年の間、長い間隔を置きながら審議されてきた一方、最高裁は2度、知的障害者の処刑が憲法修正第8条が定める「残酷で異常な刑罰の禁止」に当たるかどうかについての判断を示した。

 

02年のアトキンス対バージニア州のケースで最高裁は、6対3で知的障害者の処刑は「まさに異常なことと見なされるようになっている。これに反対する国民のコンセンサスができあがっていると言っても差し支えない」との結論に至った。この判決では連邦政府と多くの州が知的障害者の極刑を廃止する方向へすでに動いていたことも指摘された。

 

ジョン・ポール・スティーブンス判事によるアトキンス側の多数意見は、各州に「憲法上の規制を遂行する適切な方法を開発する務め」を託すことになった。これを受け、ホール受刑者の量刑に関する審理があらためて行われた。検察側の文書によると、専門家はこのとき、ホール受刑者のIQが80はあると報告した。

 

この訴えについて、フロリダ州の最高裁は死刑の判決を支持し、IQ70を線引きの基準とすることは合憲だとの立場を繰り返した。

 

一方、ホール受刑者の複数の弁護士は、精神医学の専門家はIQの数値を厳密にとらえることはないと主張したが、フロリダ州の最高裁は「われわれは同意しない。アトキンスのケースでは、どういった人が知的障害に分類されるべきかという点で識者の間で意見の相違があり、最高裁は個別の州にその決定権をゆだねた」との立場を示した。

 

今回連邦最高裁へ提出した文書で、ホール受刑者の弁護士は、「被告人の腕に巻いて、Rの文字が出たら知的障害、Nの文字が出たら知的障害ではないというふうに、知的障害を測る血圧計のような機械を人類はいまだ開発していない」と述べた。

 

最高裁は今月、ジョージア州のウォーレン・ヒル受刑者が知的障害であることを示す新たな証拠に基づき、死刑執行の猶予を求めた訴えを退けた。ジョージア州議会はこの事件とは関係なく、州の処刑基準を見直している最中だ。

 

今回のホール対フロリダ州のケースに対する最高裁の判断は14年7月までに出る見込み。

 

【2013.10.22 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版