発達障害のある子どもを就労まで切れ目なく支援しようと、福井県は独自の調査票を盛り込んだ「子育てファイルふくいっ子」を作成した。早期の発見につながり、専門知識がない教員や保護者でもチェック項目に答えて障害の態様を把握できる。発達状況を県内統一の様式で記録することで、進学の際の引き継ぎも容易になる。県は近く、県内の保育所や幼稚園、小中高校などに配布し運用を始める。来月からは各地で保育士や教員ら向けに研修会を開く計画。
17日は、福井市の県精神保健福祉センターで発達障害者支援連絡会議を開き、福祉や教育、就労関係者に同ファイルを説明した。
アスペルガー症候群など発達障害はコミュニケーションが苦手などの困難を抱えるが、本人や周囲が気づかず、就職してから問題が表面化するケースがある。支援を受けている子どもも、進学を機に十分な配慮を受けなくなることもある。
県は昨年3月、法政大の黒澤礼子講師らと協定を結び、黒澤講師の考案した評価シートを現場で使いやすいよう、簡略化する検討を進めていた。
完成したファイルは出生時の記録から、保育・教育歴、職歴を書く「プロフィール編」と、1歳半~学齢期まで、成長に応じて4段階の調査票を盛り込んだ「支援・引継編」の2部構成。
各年代の調査票は「コミュニケーション能力」「衝動性」「運動」など分野ごとに数個ずつチェック項目があり、合計点数を点数化して図表にする仕組み。どの分野に特に問題があるのか、視覚的に把握できるよう工夫している。さらに引き継ぎに配慮し、各分野の状況を記述する「発達状況シート」も設けた。
保育士や教員らが、子どもの様子が気がかりと感じたときに、保護者の同意を得てファイルを導入。特性に応じた保育や学習指導につなげる。
このほか参考資料として、黒澤講師が開発した成人期用の調査票も収録。ファイルを就労期にも使えるようにした。
発達障害者支援連絡会議で県教委は、学校間でファイルを引き継ぐ際、ガイドラインについて話した。県特別支援教育センターや県発達障害児者支援センター(スクラム福井)からは「保護者や本人が障害を認めたがらないことで支援が難しくなっている」との指摘があり、分かりやすく障害を把握できるファイルに期待する声が出た。
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