継続的な教育が難しい発達障害の子どもたちのために、愛知県で全国初となる中高一貫の特別支援学校をつくる動きがある。発達障害の研究者、支援者、親、本人らで組織するアスペ・エルデの会(名古屋市)の取り組みで、行政の協力を得て数年内の開校を目指す。 (編集委員・安藤明夫)
三月に名古屋市内で開いたシンポジウムで、同会ディレクターの辻井正次・中京大教授(発達臨床心理学)が、この計画を公表した。
中高一貫の新しい特別支援学校は、発達障害の子を対象に一人一人に応じた六年間を通した教育プログラムを立てる。コミュニケーション能力など発達障害の子が苦手な部分を補い、卒業後の就労、自立につなげることを目標にしている。
運営は総合特区法に基づく「公私協力学校」を検討している。私立だが設立に際し、行政が用地を提供するなど協力する形式。民間ならではの特色ある教育も打ち出せる。民間の福祉事務所を併設し、福祉と連携して働きやすい環境づくりを企業に働き掛けたり、就職後の見守りなどを充実させたりするという。
同会と計画を進める愛知県政策顧問で、前参院議員の山本保さんは「学校の運営には公的補助とともに、企業の支援が不可欠。発達障害の子たちが企業の大きな戦力になりうることをアピールしたい」と話した。公私協力学校は現在、幼稚園と高校しか設置・運営が認められていないが、文部科学省に法改正を求めているという。
発達障害に特化した特別支援学校は、徳島県小松島市に昨年開校した「県立みなと高等学園」があるが、中高一貫校は実現すれば全国初。
◆背景に高等部の対応遅れ
アスペ・エルデの会が中高一貫校を打ち出した背景には、特別支援学校の体制をめぐる各種の問題がある。
発達障害と診断される子は年々増え、一般校の通常学級でも発達障害の特性を持つ子が6・5%(文部科学省調べ)に達する。二〇〇五年に発達障害者支援法が施行され、特別支援学校の小・中等部では専門的な支援も次第に充実してきた。しかし、高等部では発達障害の受け入れが明文化されておらず、知的な遅れを伴う自閉症は「知的障害」、知的な遅れのないアスペルガー症候群などは「病弱」の名目で入学しているのが現状。それまでの指導が分断される上、教育内容も障害に応じたものが乏しい。一般の中学校からの入学志望も増え続け、高等部の入学倍率の激化、マンモス化が大きな課題になっている。
特に愛知県には全国のマンモス校トップ10に入る特別支援学校が五つあり、早期の改善を迫られている。
<アスペ・エルデの会> 1992年に名古屋で発足。発達障害の子どもたちの療育と生活の場をつくる取り組みを起点に、療育の専門家やボランティアを育成するスクール事業、愛知、岐阜、三重県での親の会づくり、成人サポート、浜松医科大と提携した研究活動など、全国に例のない広範な支援活動をしてきた。入会申し込みや問い合わせは、同会のホームページ(アスペ・エルデの会で検索)から。
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