ビタミンB類の一種である葉酸は、人間に必要な栄養素。特に妊娠中の摂取は、おなかにいる赤ちゃんが神経を作る助けになる。こうした中、ノルウェー公衆衛生研究所のPål Surén氏らは、葉酸のサプリメント(栄養補助食品)を摂取していた妊婦から生まれた子供では、自閉症になるリスクが4割低下していることが分かったと、2月13日発行の米医学誌「JAMA」(電子版)に報告した。ただし、アスペルガー症候群などでは関連が示されなかったという。
おなかにいる赤ちゃんは日々、体のさまざまな器官を懸命に作っているが、中枢神経系(脳と脊髄)の元となる神経管がうまく作れない状態、「神経管閉鎖障害」に陥ることがある。この状態になると、歩けなくなったり大腸が機能しなくなったりする「二分脊椎」を抱えて生まれる可能性があり、脳がうまく作られない「無脳症」になると、死産もしくは出生後数日で死亡してしまう。
その神経管閉鎖障害になるリスクを減らすのが葉酸だ。妊婦の葉酸摂取は世界的に奨励されており、日本では妊娠を計画している女性に対し、1日0.4ミリグラム(400マイクログラム)を取るよう勧めている。今回の研究が行われたノルウェーでも、同じ推奨がされているという。
胎児が神経を作る助けとなる葉酸だが、神経に関わる自閉症などの発達障害とは関連するのか。Surén氏らは、2002~08年に生まれた8万5,176人の子供(単胎、在胎32週以上、出生体重2,500グラム以上)を対象に検討を行った。
その結果、妊娠の4週前~妊娠8週に葉酸を摂取していた母親から生まれた子供では、そうでない子供に比べて自閉症リスクが39%低いことが分かった。不安障害やうつ病、てんかん、体外受精などの影響を除外しても、この結果は変わらなかったという。
一方、アスペルガー症候群や「特定不能の広汎性発達障害」(他の広汎性発達障害や統合失調症などの基準を満たさない発達障害)との関連については、葉酸摂取の有無で差が認められなかった。
今回の研究結果について、Surén氏らは「妊娠前4週~妊娠後8週に葉酸サプリメントを取ることで、子供の自閉症リスクが低下することが示された」と結論。これによって葉酸と自閉症の直接的な関連が示された訳ではないとしつつ、他の研究結果と一致することから、今後の研究で遺伝的な要因や発症の仕組みを解明する必要があると訴えた。
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