日本初!大人の発達障害の人々が運営するブックカフェ「Necco」で自分らしく働く若者たち 【東京】

階段を上がると、「発達障害」などの書籍の並ぶ棚や、正面にスクリーンなどが配置された店内に、ほんのりとコーヒーの香りが漂う。ここは、都内でも珍しい、コミュニケーションが苦手という人たちや、社会になじめない人たちなどの集まるブックカフェであり、ITやアートなどのコワーキングスペースにもなっている。

そんな東京都新宿区の早稲田通り沿いにオープンした「Necco Cafe」(ネッコカフェ)では、「大人の発達障害」などの当事者たちが、ブックカフェを運営している。カフェで出されるコーヒー豆も本格的だ。「モカ」「ケニア」といったコーヒー豆は自家焙煎されていて、1杯ずつ丁寧にペーパードリップされる。アイスコーヒーも、24時間かけて仕込んだ「本格水出し」だ。メニューには他にも、オリジナルブレンドのハーブティーやオレンジジュース、クッキーなども用意。1杯のドリンクで、訪れた人たちは、読書を楽しんだりしながら、思い思いにくつろいでいる。

 

カフェタイムは毎日、12時から18時。フリータイムの18時から22時には、「居場所」として開放される。時間によっては、当事者たちが本人や家族の相談に乗ることもある。また、発達障害や引きこもり問題に関連するイベントも時々、行われている。

この“Alternative Space Necco(オルタナティブ・スペース・ネッコ)”は、日本で初めての「大人の発達障害当事者による、大人の発達障害当事者のための居場所と作業所」を目指した就労支援施設だ。作業所のほうは、「Necco」という名称ではなく、「ゆあフレンズ」という名称の「就労継続支援B型事業所」になっている。

 

「ここの利用者は、引きこもり系の人たちが多いですね」こう語るのは、「Necco Cafe」を運営する金子磨矢子さん。自らも当事者だと明かす。

 

金子さんが、自分も当事者だと気づいたのは、娘が2歳くらいのとき。自分の娘が、よその子と違うことに気がつき、「なんで違うんだろう?」と思って、一生懸命調べてみた。そして、「のび太・シャイアン症候群」(注意欠陥・多動性障害の症例)のことが書かれた本を発見。読んでいくうちに、「片づけられない」「物事を最後までやり通すことができない」などの特徴から、「これは自分のことだ」とわかった。 しかし、娘のケースは、それと少し違う。2歳くらいのときから、近所の子と遊ばせようとすると、赤ちゃんの顔を引っかいたり、倒しちゃったりする。いまから振り返れば、聴覚過敏だったんですね」

 

2005年頃から、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの「ミクシィ」などを通じて、オフ会を開くようになった。小さい集まりが、最初はファミリーレストランなどで、いくつも生まれた。でも、お金のない人は、電車賃がなくて、無料の会場でも来られない人がたくさんいる。できる限り安く上げようと、会費数百円で集まりの持てる、地域センターなどを予約。「いつでも行ける居場所が欲しい」というのが、皆の悲願だった。

 

こうして「発達障害の人たちの居場所とか、フリースペースを作りたい」と言って借りた先は、民間賃貸のビルの2階フロア。当初は、任意団体として登録した。 「ここの物件に決まるまで、5軒くらい断られました。発達障害とか、精神とか聞くと、なかなか貸してくれなくて…。黙って借りて、運営するわけにもいかないのでね」

 

最初は「(物件で)何をやってもいいです」と言っていながら、いざとなると、「やっぱり、不特定多数の人が来るところはダメです」などと断られたこともあるという。

 しかし、紆余曲折を経て、2011年4月に社団法人を作って申請。同年9月1日に「就労継続支援B型」の認可が出た。

 

上のフロアは、外国人用のゲストハウスだったが、空いたため、その就労スペースとして借りることができた。3階のフロアをのぞくと、オフィスのように大きなデスクと新しいパソコンが並び、クリエイティブにアイデアが創造できそうな空間になっている。そこには、昔の「作業所」のイメージはない。

 

「ネットを検索して集まってきた人たちが多いからか、IT系、理系の人たちが、ここに出入りしています。イラストやHPなどを作る仕事を受注したり、ワードプレスなどの勉強会も無料で行ったりしています」これまでは、口コミで来るような仕事が中心だった。これからは、どういうルートで開拓し、仕事として受注して回していくかが課題だという。

 

【関連サイト】

 ・Alternative Space Necco

 ・Neccoカフェ

 ・DIAMOND online