新しい出生前診断について、一般市民の感覚で語り合おうという集まりが十二日、東京都文京区根津の「みのりCafe」で開かれる。精度の高い出生前診断は、障害者の命の否定につながる懸念もある。カフェのオーナーで主催者の鈴木信行さん(43)は「命をどうするかという問題なのに、議論しているのは医療者ばかり」と、幅広い参加を呼び掛けている。
新しい検査では、妊婦の血液から、胎児が特定の染色体異常であるかどうかが99%以上の高い確率で分かる。昨年夏、複数の医療機関が臨床研究を始める意向を示したため、命の選別につながりかねず安易な普及を懸念した日本産科婦人科学会は、実施のための指針案を十二月にまとめた。学会のホームページで公開し、今月二十一日まで意見(パブリックコメント)を募集している。
指針案を読んだ鈴木さんは「書き方が難しく、何が問題なのか、どのように自分たちに影響するのかが分かりにくい」と指摘する。そこで指針案の内容を解説しながら、参加者が考えを深められる雑談会をカフェで開くことにした。
会の目的は一つの結論を出すことではない。「みんなの意見を聞き、それぞれ考える会にしたい。そこで気づいたことがあればパブリックコメントとして送るなど、声を外に出すことが大切」と鈴木さんは話す。
鈴木さんは先天性の病気「二分脊椎症」で下肢などに障害があり、二十代で、がん闘病経験もした。一般に病気の治療法も妊娠中の検査も、診察室という狭い空間だけで話されているが、自身の経験から「どんな検査や治療を受けるかは本来、その人がどう生きたいかという問題。もっと普通に話せる場が必要だ」と強調する。
そんな思いから、二〇一〇年に医療者と患者をつなぐ団体「患医ねっと」を設立。カフェでは患者と医師や医療系学生が語る会や、患者の立場から医療を見直す会などを定期的に開いている。
十二日の会は午後七時~八時半。定員十五人で参加費は千円(ドリンク付き)。申し込みは、メール(info@kan-i.net)で。
<新しい出生前診断> 妊婦の血液から、胎児のダウン症などの可能性がある3種類の染色体異常を調べる。従来の母体血清マーカー検査と比べて簡単で精度も高い。確定診断には羊水検査が必要。障害者の生命の否定につながることを懸念する日本産科婦人科学会は、指針案で、妊婦の十分な認識なしに検査が行われる危険性を指摘。検査対象を出産時に35歳以上の妊婦らに限定することや、実施の際に臨床遺伝専門医の産婦人科医か小児科医がいることなどを挙げた。
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