アメリカ・デトロイトに住むウェンドロウ一家。 塗装業を営むジュリアンと妻・タリーは、結婚21年目。 2人の子宝に恵まれ、幸せな生活を送っていた。実は長女のエイジリンは、2歳の時に重度の自閉症と診断されていた。 自閉症とは、先天的な脳の障害の一種であり、人によって様々な症状を持つ病である。
特にエイジリンの場合は症状が重く、一言も喋らず、生まれてからずっと一人きりの世界に閉じこもっていた。
愛する娘とコミュニケーションが取りたい、それが夫婦の夢だった。セラピーなど色々試してみたものの、エイジリンの症状は改善しなかった。しかし、それでも家族は幸せに包まれていた。
そんなある日、ファシリテーテド・コミュニケーションを知人から紹介された。ファシリテーテド・コミュニケーションとは、1989年にダグラス・ビクレン教授によって提唱された自閉症患者のための新しいコミュニケーション方法である。ファシリテータと呼ばれるサポーターが隣に付き添い、患者の腕や肘を支えながらキーボードを打つことで、エイジリンのような全くコミュニケーションが取れない患者でも、自分の意志を表現できるようになるというものだった。
その頃、一般的な考えではなかったが、今では自閉症患者は症状の度合いにもよるが、皆 彼らなりの思考能力を持っていると考えられている。1990年代当時、いち早くその考え方に基づき考案された、このコミュニケーション方法は、画期的な方法としてニュースなどで取り上げられた。
エイジリンとコミュニケーションが取れるかもしれない。 夫婦は藁をも掴む思いでエイジリンをサポートしてくれるファシリテータを捜した。そして、やっと見つけたのが、元学校職員のシンシア・スカーセラだった。
シンシアはまず簡単なゲームから始めた。だが、エイジリンには目立った変化は見られなかった。 残された道はもうなかった。 2人は焦る気持ちを抑え、シンシアのトレーニングに全てを任せることにした。
それから数週間後・・・あきらかに以前とは違う変化の兆しが見え始めた! 次にシンシアは、パソコンの前にエイジリンを座らせた。すると、エイジリンは「I AM HUNGRY」とタイピングしたのだ!!それは、夫婦の夢が叶った瞬間だった。
以後、シンシアは主に学校生活をサポート。エイジリンは、キーボードを通して徐々に自分の思いを伝えられるようになり、到底無理だと思われていた普通中学を卒業。さらには、高校進学までも果したのである。
これから明るい未来が待っている、家族の誰もがそう信じていた。だが・・・いつものようにシンシアが学校に付き添っていたときのこと。エイジリンが「お父さんが私を殴るの」と打ち出したのだ!!
【詳細】
・ファシリテーテド・コミュニケーション(当サイト)
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