<精神障害者虐待>社会福祉法人元理事長を逮捕 傷害容疑【千葉】

千葉県南房総市の精神障害者施設「ふるさとホーム白浜」入所者への虐待問題で、千葉県警は28日、同施設を運営する社会福祉法人「愛と光の会」(東京都荒川区)元理事長、山下洋子容疑者(70)=同区西尾久7=を傷害容疑で逮捕した。県警によると「暴力を振るった覚えはない」と容疑を否認している。

逮捕容疑は今年9月2~3日、山下容疑者の運転手だった元入所者の女性(50)に「(山下容疑者の)身の回りの世話ができていない」などと因縁をつけ、背中や足を蹴るなどして約10日間のけがをさせたとしている。

女性は9月、県警館山署に被害届を提出する一方、施設元職員が10月1日、障害者虐待防止法(同日施行)に基づいて市に通報。県は女性ら入所者数人への虐 待を確認し、同26日付で山下容疑者が関与しない運営体制の整備などを勧告した。同法に基づく通報とこれを受けた改善勧告は共に全国初。山下容疑者は理事長を辞任した。

厚生労働省は来月初めにも社会福祉法に基づき「愛と光の会」を特別監査する方針。逮捕容疑となった傷害の他、水風呂に入れるなど千葉県が認定した虐待の背景を調べる。


「時間はかかった。けれど本当に良かった」。虐待を南房総市に通報した施設の元女性職員(51)は28日、毎日新聞の取材にほっとした様子で語った。

昨年3月のオープンと同時に採用。自宅のある東京から頻繁に来る山下容疑者が入所者に虐待を繰り返していると、 宿直の職員らから聞いていた。あまりにひどい虐待と待遇に退職者が相次ぎ、元職員も残業代の不払いなどで対立。今年6月、突然解雇された。

しかし、入所者のことが気がかりで、残った職員とひそかに連絡を取り合った。虐待の証拠を確保するため病院で診断書を取らせ、警察に通報する手順も仲間で知恵を絞った。

「こうした問題は他の施設でも起きているかもしれない。勇気をもって声を上げてほしい」と元職員は訴えた。

 

2012.11.28 毎日新聞