発達障害者に就業体験【徳島】

高校段階の発達障害者を対象とした全国初の特別支援学校が、徳島県小松島市に開校し、1期生27人が社会的自立を目指して就業体験に励んでいる。同校は県立みなと高等学園。病弱または知的障害を伴う発達障害者を受け入れる。高校は入試によって一定の学力以上の生徒が進むことを想定しており、発達障害者への個別支援は手薄になりやすい。このため、発達障害の子を持つ親が、就労に向けた専門的な支援を要望したのを受けて、県が今春開校した。

周囲とコミュニケーションを取るのが苦手な生徒が多いため、1学級を最大8人に抑制。生徒ごとに「教育支援計画」を作り、指導にあたる。力を入れているのが、職場で協調しながら働けるようになるための就業体験。5月から、生徒が交代で飲食物を売る実習に取り組んでいる。

 

「いらっしゃいませ」「レジへどうぞ。おはしは要りますか」。9月下旬の昼休み、エプロン姿の生徒たちが、弁当や飲み物を買いに来た教師や生徒に笑顔で応対した。商品陳列や収支計算も行うため、西條翔吾君(16)は「実践的で勉強になる」と話す。

 

冨樫敏彦校長(57)は「生徒は徐々にあいさつできるようになってきた」と喜ぶ。来月、近くの介護施設などで、初の校外実習に挑む予定だ。同校と共同研究する橋本和明・花園大学教授(臨床心理学)は「現場の教師と一緒に指導法などの体系化を図り、全国に発信したい」と意気込む。

 

文部科学省は「みなと高等学園によって、支援の仕方がまた一つ広がった。各自治体でも工夫して進めてほしい」と話している。

 

2012.10.19 読売新聞