日本で初めての障害者情報バラエティー「バリバラ」(NHKEテレ、金曜午後9時)が、新鮮な切り口で話題を呼んでいる。NHK大阪放送局の制作で、関西ならではの「笑い」をふんだんに取り入れ、とかく地味と思われがちな福祉番組のイメージを覆している。障害の有無や軽重はあるにしろ、まずは一緒に笑い、それからともに考えよう-。笑いと福祉を生真面目に結び付ける。
番組名は「バリアフリー・バラエティー」の略で、十三年続いた障害者番組「きらっといきる」が前身。ことし四月に始まった。
恋愛や出産、子育てといったテーマを各回設け、たとえば障害のある人が勤める作業所の工賃の安さを取り上げる。識者が問題点を解説するのではなく、スタジオのひな壇に並んだ障害者が自由に意見を交わし、笑ったり困ったり、素の表情で答えの出ない問題まで語り合う。
画期的なのが「これまでタブー視されていた障害者の性やお笑いのジャンルにも果敢に切り込みます」という番組方針。脳性まひの自称モテない障害者代表の男性による恋人探しの珍道中を追った回はスタジオ内が爆笑に包まれた。健常者の「親切な思い込み」や、健常者優位の街の「珍百景」も、笑いにまぶしてチクリと刺す。
日比野和雅チーフプロデューサーは「障害のある人と一緒にどこまで笑えるか、その境界線を考えることがともに生きるということだと思う。笑えば距離は近くなる。笑いながらなら本音もいえる。『笑った後でみんなで考えようや』ということです」と話す。
ただし、始終笑ってはいない。常時介助が必要な男性がヘルパーの力を借りてベッドで彼女と抱き合う姿や、好意を寄せ合ったはずなのに体を受け入れてもらえなかった女性が「体ごと愛してもらえないんだと思った」と涙するシーンもある。障害があるからと周囲に妊娠中絶を求められたカップルの苦悩も描く。
司会の一人、大橋グレース愛喜恵は「障害者同士が普通に話していることがテレビで話せるのがうれしい。これが普通の社会なんだろうな。笑いとかユーモアに障害者も健常者も関係ないですよね」と話す。大橋は五輪柔道の米国代表に内定していたが、十八歳で難病と診断されている。
同じく司会の玉木幸則は脳性まひで、障害者の自立生活運動に取り組んでいる。「一人で頑張らなくていいし、一人で悩まなくていい。そのためにここで語り合っている」と玉木。「生きづらさ、暮らしづらさは障害があってもなくても多かれ少なかれあるし、障害者の番組を見ているうちに、気が付いたら自分のことを考えていたとなればいい」と願っている。
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