中部学院大学(岐阜県各務原市)子ども学部教授で臨床心理士の別府悦子さん(52)が、自閉症など発達障害を持つ子どもたちが、周囲の支援で円滑に生活ができるようになった事例をまとめた本「発達障害の人たちのライフサイクルを通じた発達保障」を出版した。別府さんは「同じ悩みを抱える人を勇気づけられればうれしい」と話している。
障害児心理学が専門の別府さんは、岐阜市内の若年無業者(ニート)や引きこもりの若者の家族会などの相談に携わってきた。その中で、発達障害の問題を抱えている若者が多いことに気づいた。
発達障害は先天的な脳の機能障害で、状況を判断したり、周囲とうまくコミュニケーションをとったりするのが苦手とされる。本人だけでなく、家族も悩んでいるケースが多いという。
別府さんは、これまでの相談で経験したことなどを基に、発達障害の子どもや青年が周囲の励ましや支援で自信を回復し、状況が改善された14の事例を、昨年4月から今年3月まで専門の月刊誌に連載。その内容に加筆修正し、7月に本にまとめ、出版した。
本では、自閉症で、怒ると暴れて手がつけられなかった特別支援学級3年に在籍していた男子児童の事例を紹介。児童の心が傷ついていると気付いた担任が、独自の計算問題集を作るなどして勉強に自信が持てるようにした結果、嫌いだった絵も描くようになり、暴れることも少なくなったという。
別府さんは「子どもは発達の過程でつまずいても、周囲の人に尊重され、伴走してもらうことで、発達の危機を乗り越えられる。決して諦めず、希望を持つことが大切」と訴えている。
「発達障害の人たちのライフサイクルを通じた発達保障」(A5判、144ページ)は、全障研出版部(電話03・5285・2601)の刊行。1部1785円(税込み)。
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