自閉症の子供 半数以上に向精神薬【USA】

米国では不安神経症、抑鬱症、多動性障害などの自閉症のさまざまな併存症に目を向ける医師が増えるなか、自閉症を抱える学齢期の子供の半数余りになんらかの向精神薬が処方されるようになっているという。

米国立精神衛生研究所(NIMH)の調査報告によれば、調査対象となった6~17歳の「特別な健康のケアを受ける必要のある子供(CSHCN)」が処方を受けている割合は精神刺激薬で32%、抗不安薬で26%、抗鬱薬で20%。睡眠導入薬、抗精神病薬、抗てんかん薬も使われていた。これらの1種類でも使用している割合は56%だった。

 

一方、報告は、使われている薬の幅広さは自閉症の子供への向精神剤使用に対する明確な診療指針が欠けていることの表れである可能性もあると指摘。また、調査を率いたリサ・コルプ博士は、自閉症の子供が抱える症状のいずれに対して薬が使われているかは詳しく調べられていなかったとしている。

 

米疾病対策予防センター(CDC)によれば、同国では自閉症を抱える子供の割合は88人に1人だが、1980年以前は珍しい症例と考えられていた。また、米市民団体、オーティズム・スピークスのジョセフ・ホリガン医療調査主任は、特により低年齢の層における自閉症の併存症に対する認識はこれまで比較的低かったと説明する。

 

自閉症は社会性発達、コミュニケーション発達、行動発達における障害を引き起こす。3歳までに症状が現れることが多いほか、しばしば認知機能や学習機能の障害を伴う。そのため発達上の必要を満たす目的で言語療法や作業療法のような手段が用いられており、今回の報告によれば調査対象1420人のうち91%余りがなんらかの療法を実践している。また、完治の方法は分かっておらず、それ自体の症状や原因を対象とする薬は販売されていない。

 

米カリフォルニア大学デイビス校の神経発達障害専門機関であるMIND研究所のランディ・ヘイガーマン氏は「自閉症の併存症を医師が認識するようになってきていることは大変良いこと」とする一方、「不安神経症や睡眠障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの治療を受けている(自閉症の)子供の割合が50%というのは、おそらく十分な値ではない」と指摘。さらに、こうした薬の使用により他の行動療法の効果が高まる可能性があるとしたほか、不安神経症や多動性障害の緩和、睡眠量の増加により自閉症の影響が軽減されると述べている。

 

2012.6.5 SankeiBiz