広島市立広島特別支援学校教諭の竹内吉和さん(52)が、自身の経験をもとに考察した「発達障害と向き合う」(幻冬舎ルネッサンス新書、255ページ、税別838円)を出版した。「向き合うことが、教育や社会全体を見直すきっかけにもなる」といい、障害を正しく理解し、早期に見つけて対処する必要を説いて反響を呼んでいる。
竹内さんは1982年、広島市の中学教諭(数学)になり、校内暴力で荒れる生徒と向き合った。多くはコミュニケーションが苦手で、感情を制御できない。感じ方や考え方でバランスを欠く発達障害の影響とみて、「支援が要る個性」と感じ、詳しく調べ始めた。学会が認定する特別支援教育士スーパーバイザーでもあり、小中高校で問題を抱える子ども約1000人と家族らに接した。
本では、周囲に構わず新幹線の話を続ける鉄道ファンの子、成績優秀だが友人を求めず教員にクレームをつけ続ける子など、具体例を多く紹介。広い意味で発達障害に分類される自閉症やアスペルガー障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害などの違いや共通点も整理した。そのうえで、最大の特徴は、聞いたことに対して関心を保てる「聞く力」の弱さだとしている。
竹内さんは、思春期までに社会性を身に着ける適切な教育や支援がなく、無理解や仲間外れなどのストレスにさらされれば、一部は非行や犯罪などへ段階的に進み、「反社会的」な人格を形成すると指摘。「少年犯罪の原因を障害に求めるのは間違い」と強調する。
現在も、同校で高等部3年の男女8人を担任し、就職に向けて指導する竹内さん。約10年前に広島市内で横行した暴走族や非行少年グループに対し、実践した教育や就職支援を例に挙げ、「発達障害の子を見捨てず、排除せず、支える社会に変わっていくべきだ」と訴えている。
コメントをお書きください