文章は読めるが文字を書くことが苦手という発達障害のある鳥取市内在住の斉藤真拓さん(20)が今春、鳥取大学地域学部に入学した。書くことが困難な障害のある人はこれまで受験を諦めることが多かったが、日本の大学としては初めて鳥取大学が入試の際にパソコンの使用を認め、晴れて合格した。関係者は「画期的なこと」と評価している。
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斉藤さんは「アスペルガー症候群」の診断を受け、文章は難解でも読めて理解できるが、頭の中で答えはあっても筆記具で書くことに困難が伴う。このため、筆記試験や小論文は苦手だった。
「勉強をするのが好き」と高校2年のとき大学進学を決意。鳥取大学付属特別支援学校専攻科に進み、塾にも通った。一方で、障害や病気で困難を抱える生徒らにパソコンやサポート機器・ソフトを提供して大学進学や就職を支援している東京大学先端科学技術研究センターのプログラムにも参加。進学先を検討した結果、地元の鳥取大学地域学部地域政策学科をAO入試で受けることにした。
パソコンでの受験を同大学の入学センターに申請したところ、大学側が準備したパソコンを使用することを条件に受験が許可された。パソコンには漢字変換機能があるため受験生間の公平性が確保できないとして、手が不自由な受験生以外で入試に使用を認めた大学はないが、「小論文を書くことと漢字変換は別。総合的な判断でパソコン受験を認めた。特にAO入試はここで学びたいという気持ちが強い人が受験するので、入学後のことに主眼を置いた」と同大学地域政策学科長の藤田安一教授は話す。
同大学AO入試では2次選考に小論文が課されるが、斉藤さんは日本の選挙の問題点や若い人たちが選挙に関心を持つためには何が必要かを書き、合格した。
発達障害者支援法が施行されて7年が経過したが、社会の理解が進んでいるとは言い難く、発達障害があることを公表していない受験生は多い。その中で読字や書字に困難のある発達障害は今回のような特別措置がなく、大学受験を諦めざるを得ないことがほとんど。斉藤さんを支援した東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫講師は、鳥取大学の対応を「“特別”ではなく自然に受け入れている」と評価する。
入学して2カ月。斉藤さんは「大学の授業は楽しい。議論ができる友人をたくさんつくりたい。福祉に貢献できる人になって地域から世界を変えていきたい」と目を輝かす。
斉藤さんの大学合格をきっかけに、同様に進学を目指す仲間も現れ始めた。斉藤さんの母(44)は「進学をしたいと思っても大学によって組織が違うので相談窓口が分からないことが多い。息子の合格がほかにもつながっていったら」と期待を膨らませている。
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