大阪大や浜松医科大など5大学は今年度、自閉症や学習障害といった子どもの発達障害に関する医学データを集約し、適切な治療教育の方法を導き出すデータベースの整備を始めた。根拠に基づく療育法を関係施設や学校に提供するのが狙いで、秋頃には運用を始める予定。将来は、家庭のパソコンなどで保護者も利用できる簡易型データベースも作り、障害の早期発見・対処のための情報を盛り込んでいく。
ほかに金沢大、福井大、千葉大が参加。いずれも発達障害の研究や療育方法の開発などで実績がある。各大学には「子どものこころの発達研究センター」が設置され、連携しながら研究や教育を行っている。
集約されるデータは、▽遺伝子▽脳画像、脳機能検査▽心理・行動テスト▽臨床診断▽療育方法と効果――などで、約1万4000人分、5万件以上に上る。
データは現在、各大学ごとに管理されており、他大学のデータとの関連はほとんど調べられていない。このため、データベース化では、「ある脳画像のパターンと、ある療育方法の効果に高い関連がある」などと、データ間の関連性を相互に結び付けていく。そうすることで、障害の種類や程度、年齢ごとに有効な療育方法や教育プログラムのパターンを蓄積できるという。
施設などで、子どもの脳画像の特徴や臨床診断などのデータを入力すると、その子に最適な療育方法などを呼び出せるようにする。個人情報を含むデータは全て匿名化する。
データベースは、障害の原因解明に向けた研究にも活用する。今後は他の医療機関や自治体などにもデータ集約への参加を呼びかける。大阪大の片山泰一教授(神経化学)は「過去の経験や事例だけに頼ると、誤った療育で症状を悪化させる可能性がある。一人ひとりの子どもに合った療育を実現したい」と話している。
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