自閉症、母親の肥満と関係=米研究チーム

2012年4月9日に明らかになった米大学の研究結果によると、米国で多く見受けられる母親の肥満が自閉症と診断される子どもの増加に寄与している可能性があるという。

米カリフォルニア大学デービス校とバンダービルト大学の研究チームによると、肥満の母親からは自閉症やその他の発育異常と診断される子どもが生まれる可能性がそうでない母親と比較してかなり高いことが分かった。自閉症などに寄与する可能性があるとされる要因はますます複雑になっているが、今回それに新たな要因が加わった形だ。研究結果は医学誌「ピディアトリクス」に掲載された。

科学者らは自閉症のリスクの約半分は遺伝子的なもので、残りの半分が親の年齢、早産、それに妊婦用ビタミン剤を摂取しなかったことに由来すると考えている。自閉症の主な特徴はソーシャルスキルの欠如や反復的な行動だ。

米疾病予防管理センター(CDC)は先月、米国の子ども88人に1人が自閉症スペクトラム障害(一連の発育異常の正式名称)と診断されており、比率は2009年の報告の110人に1人よりも上がっていると発表した。

肥満と発達障害との関連はとりわけ懸念される。米国では肥満が実に多く見受けられるからだ。論文によると、米国の出産年齢の女性のうち約3分の1が肥満とみられるという。

大学チームの研究は、自閉症ないしその他の発達障害と診断された2~5歳の子どもと、そうでない子ども1000人以上を対象とし、合わせて母親の健康記録も調べた。

その結果、肥満でない母親と比較すると、妊娠前に肥満だった母親から自閉症児が生まれる確率は60%高く、その他の認知・行動面での発達遅延がみられる子どもが生まれる確率は2倍だった。

分析の際に、妊娠前または妊娠中に高血圧症ないし糖尿病と診断されていた母親を加えると、リスクの差は一層際立ったという。

研究チームは、肥満やその他のメタボリック(代謝障害)症状が自閉症やその他の発達障害の一般的なリスク要因であることを研究結果が示唆していると指摘した。

論文の執筆者でカリフォルニア大学デービス校のイルバ・ヘルツピッキオト博士は、「胎児の脳は基本的に母親の体内で起こっている全てのことから影響を受けやすい」と述べた。

しかし同博士は、「どの子どものケースにおいても一つの要因が原因だということはない。『母親を責める』ような問題ではない」と付け加えた。

ロチェスター大学の小児科医スーザン・ハイマン博士は、この結果にはプラスにできるテーマがあると指摘し、「肥満に関する統計は警戒すべきだが、肥満は修正可能なリスク要因だからだ」と述べた。同博士は今回の研究に参加していない。

母親の体重ないし代謝障害がどのように自閉症やその他の発達障害に作用するのかについては不明だ。ヘルツピッキオ博士は一つの可能性として、インスリン抵抗性(インスリンの効力を規定する個人の特性)の関与を挙げた。

一部の肥満の人にみられるように、体内でインスリンが適切に作られなかったり、使われなかったりすると、エネルギー源である糖を生成したり、糖を脳などの組織に送ったりする方法が変わる。こういった変化がとりわけ胎児の脳に影響を及ぼす可能性がある。胎児の脳は多くの糖分を必要とすることで知られているからだ。

同博士は、今回の研究では血糖をコントロールできている母親とそうでない母親とを比べることができなかったと指摘した。

自閉症の潜在的な要因は増えており、今回それに肥満という要因が加わった。カリフォルニア大学デービス校の研究者らはその他の環境的な要因についても研究を行ったことがある。同チームは昨年夏、今回の研究と同じ人々を対象として、胎児の家族が妊娠第3期に幹線道路の近くに住んでいると、自閉症リスクが2倍に上がったとする結果を発表している。妊婦用ビタミン剤を摂取していなかった場合や、出産と出産の間が12カ月未満の場合も、自閉症との関連があるという。【2012.4.9 ウォール・ストリート・ジャーナル