居住型ケアサポート 利用時の注意点
Important Reminder when using Residential Care
0~18歳は MCFD (Ministry of Children & Family Development) 、19歳~は CLBC (Community Living BC) 。。。という感じで、子どもの年齢によって、政府機関の管轄が変わるので、提携しているエージェンシーも変わってきます。
つまり・・・例えば、子どもが10歳の時に一時期利用した「MCFDの紹介のケアサポート」が良かったからといって、19歳の時に再び利用できないのです。ただ、例外的に、「18歳をまたいで、長期に利用する場合」は、環境を変えるのは混乱を招くと判断され、継続して滞在が可能になることもあります。
まず、「家庭と同じようなケアを求めている人」は、当然のことながら、「居住型ケアサポート」を利用しようと思わない方がいいかもしれません。たとえ、どんなに評判のいいエージェンシーから紹介されたケアギバーやサポートワーカーであっても、所詮、あなたのお子さんは「他人の子」です。
勿論、巷でたまにニュースになるような「虐待やネグレクト」といった扱いをされる可能性は、そうそう日常茶飯事起こることはないです。(ない・・・と信じたいです。)
しかし、嫁姑の関係でもよくあることですが、姑が良かれと思ってやったお孫さんのケアが、お嫁さんには満足がいかない。腹立たしいということもありますよね。同じようなことが、子どもを預かってもらうケアギバーと、その子どもの親御さんの間でも起こってしまうかもしれません。特に、ケアギバー自身が子育て経験者であるベテランママの場合、そのような状況は生まれやすくなります。
ケアギバーは、「自閉症特有の症状への対応」など、特別なケアは学びますが、通常の日常ケアは、自分の経験からベストと思える方法で行うかもしれないのです。その方法がたまたま親御さんの方法と似ているのであれば、問題はないでしょう。しかし、違っていると、わだかまりが出来てしまう可能性が高くなります。
あまりにも全てを正直に指摘してしまうと、関係が上手くいかなくなってしまうかもしれません。かといって、言いたい気持ちを我慢して、付き合っていくのもキツイです。ストレスが溜まりに溜まって、遅かれ早かれ爆発してしまう瞬間がやってきたら・・・問題は更に拡大してしまいます。
ある程度の事は大目に見て、嫌みにならない程度に、不安に思っていることをシェアし、上手にコミュニケーションを取って、解決していけるタイプの人ならば、「居住型ケアサポート」の長期利用を考えても大丈夫でしょう。しかし、もともと神経質で細かい人、「全てを自分のやり方でしないと気が済まない」ような過保護的な親御さんには不向き。。。といいますか、ケアサポートを利用のはかえってストレスになり、非常に辛いをしてしまうかもしれません。
一概に「○○だ」と、サービスの質について断言することはできません。これは、エージェンシーにもよりますし、スタッフ個人個人によっても違ってきます。
しかし、注意したいのは、「障害者に関連した福祉サービスが日本よりもある程度確立しているから、当然、専門のエージェンシースタッフは、きちんとトレーニングされているだろう。。。」などとは思わないこと。
驚くことに、認知された大手のエージェンシーであっても、そこで勤務しているサポートワーカーから、コーディネーター、マネージャーまで、障害者に対して大した教育や知識、経験がなく、その任務についている場合もあるのです。(実は、「そういったエージェンシーの方が多い」という政府関係者からの声も・・・)
例えば・・・
● 重度の自閉症児を担当しているのにもかかわらず、いつまで経っても視覚教材を使うことを知らず、その結果、子どもは言うことを聞かず、パニックに。
● 環境の変化や、事前にきちんとスケジュールを知らせてないが故に不安になり、急に昼間に失禁するように。すると、不安となっている環境を見直すことなく、いきなり親に黙ってオムツをはかせるように。
●「犬が苦手で、注意してないと、避けようとして車道に飛び出すから気をつけて!」と、予め伝えておいたのに、現場のサポートワーカーに伝わってなく、何も注意を払うことなく、普通に散歩。その結果、案の定、車にひかれそうに。
・・・なんてこともあります。エージェンシーによっては、「実の親が子どものケアに参加すること」は想定外で、「子どもがどのようにケアギバー宅で過ごしているのか」を綴ったレポートさえも親はもらえないということも。なんでも、このエージェンシーの 90%以上のクライアントは、親の死亡、または虐待やネグレクトで、親がいない状態。きちんと生きていて、積極的にかかわってくるようなタイプの親はあまりいないので、どのように親と接していいのか・・・が分からないとのこと。
※実は、これらはすべて私の息子と私の実体験です。その後、私が何度もクレームを出して、政府関係者にも支援を求めてミーティングを繰り返し、状況は多少改善されましたが、大切な子どもを守るため、常に親や関係者が注意深くエージェンシーの仕事ぶりを監視することが大切です。
エージェンシー、ポジションによって異なりますが、スタッフが交代することは、カナダでは当たり前のように頻繁に起こることです。「自閉症者のケアには、環境をなるべく変えないこと、規則的な生活を送ることが大切」という認識は、専門家達の常識になっていますが、それでも、現場のスタッフによっては、クライアントの状況などお構いなし。自己都合でバンバン辞めることは珍しくありません。
しかも、その辞め方もひどいこともあります。「ケアしている自閉症者に何も言わずに、ある日突然来なくなる」ということも。当然、「そういった無責任な行動が、自閉症者にはパニックにつながる」と、理解していなければいけないところですが、上記の「エージェンシー&スタッフサービスの質」でも記載した通り、自閉症への充分な知識がないスタッフも中にはいるので、困ったものです。そのようなことがないように、最初からエージェンシーのマネージャーに釘をさして置くこと。もしも、不幸にも起こってしまった場合には、次回がないようにしなければいけません。
また、突然失踪ということはなくても、「現場スタッフ交代時にクライアントの情報交換がきちんとされていない」なんてことも、残念ながらカナダでは珍しくないのです。これも、自閉症者にとってパニックを引き起こしかねない出来事です。こういった事態を避けるためのアイディアとして、「シェアしたい子どもの全ての情報を1冊のバインダーにまとめて置く」という方法もあります。「子どもの症状・今まで取組んできたこと・できること&できないこと・問題行動・ケアする際の注意点」などなど。。。が記載されたノート、資料が入ったバインダーがあれば、どんなにスタッフが入れ代わっても、毎回正しい情報が伝わり易くなります。
「ケアギバー」とは「介護士」の意味。日本語で言えば、エージェンシーから派遣されているサポートスタッフも、グループホームにシフト勤務しているスタッフも全員「ケアギバー」になってしまいますが、ここでお話をするのは、あくまでも「個人宅でのホームステイでのケアギバー」です。
当然のことながら、ケアギバーの質にも個人差があります。「なんらかの事情で、家庭で世話をすることができない障害児/者のケアを親に代わってしてあげたい」と希望した一般の家族が申込みをし、政府機関やエージェンシーが審査。パスすると、正式に「ケアギバー」として認定となります。
特別な≪学歴・職歴・資格≫は、持っていることにこしたことはないですが、必須ではありません。経済的に安定し、犯罪歴などがなく、清潔な環境を提供できる普通の家庭であれば、パスできるそうです。健常児/者であっても、他人の子どもを世話するとなると大変なのに、障害を持っている場合は、更に苦労も増えることは容易に想像できます。その苦労を買って出てくれる家族は非常に貴重で、不足しているが故に、審査基準もそこまで厳しくないといいます。
このような選定方法からも分かるように、「ケアギバーの質」は、バラつきが多く、ケアは個人宅での密室で行われているので、いろいろなスタッフが出入りするグループホームのスタイルと比較して、実態はつかみにくいと言えます。エージェンシーによっては、この「密室」での環境を懸念して、何かあったとしても報告できない「言葉のない、重度障害者は入居させない」というポリシーを持っているところもあります。
同じ日本人同士なら、ツーカーで通るところもあるでしょう。しかし、このバンクーバー近郊で日本人のケアギバーを見つけることは至難の業。多くは、多文化で形成された「カナダ人」のスタッフが担当することになるので、家族の「出身国・文化的背景・宗教・慣習・生活様式」などが顕著に子どもに影響を及ぼします。「中国から移民した中国系カナダ人の家庭なら、常に中国語と英語が飛び交い、食事はお米が中心の中華料理。カナダで生まれ育った Caucasian家族なら、英語のみ、食事はパン中心の西洋料理。」といった感じかもしれません。
文化も違っていると、ケアの方法も違い、不満の原因になってしまう可能性も高くなります。
例えば・・・
●歯磨きを食前のみにしたり、夜は歯磨きをしない
●シャワーは毎日入らない
●甘いもの・ジャンクフードを摂り過ぎる
●野菜が極端に少ない
●食事は、インスタント・冷凍物ばかり
●宗教的なイベントに連れていく
などなど。。。家庭のような雰囲気の環境でケアする「ケアギバーのケア」であっても、必ずしも実の親御さんのケアと同等のケアを提供できるとは限りません。むしろ、不可能と言った方がいいでしょう。
「異文化を理解して、『人には人のやり方がある』と納得し、ケアギバーをある程度信用し、妥協する」
これが、「ケアギバーのケア」を成功させるコツです。それでも、気を決して抜かないで、子どもの様子をきちんと観察して。どうしても見過ごすことができない問題を発見したら、早急にケアギバー本人やエージェンシーに伝えて、解決を図ることです。
「自閉症・発達障害」という同じ名称の障害をもっていても、「ペラペラ喋れる人」もいますし、「ペラペラまではいかなくても、なんとか自分の気持ちを訴えることが出来る人」「まったく喋れない人」と、その症状はさまざま。
「健康であれば、きちんと機能するはずの身体が機能しない」
これは、身体のどの部分であっても不便を感じます。人間の身体で要らない部分などないのですから。。。しかし、その不便度は、部位によって異なってきます。単純に想像しても「足がない」のと「目が見えない」のでは、確実に視力を失う方が、日常生活に対する制限が多くなるだろうことは明らかです。
「話す」ことをはじめとした「コミュニケーション機能」も、視力と同じ、人間にとって非常に重要な機能のひとつです。コミュニケーション障害があったとしても、親御さんの保護下にある間は、小さい頃からの以心伝心もあり、ある程度問題なく暮らしていく事ができるでしょう。しかし、ケアを他人に任せることになる「居住型ケアサポート」では、「コミュニケーション能力があるか否か」が重要なポイントになります。特に、一般の家庭に預けるタイプのサポートでは、ケアは個人宅で行われます。つまり、密室になるため、第三者の目が届きにくいのです。
なんとかコミュニケーションを取れる人であれば、万が一、ケアギバー宅で不快な思いをしたとしても、親御さんに訴えることができるでしょう。でも、所謂「None-Verbal」と言われている、言葉を喋れないコミュニケーションも取れない人の場合、どういう扱いをされているのか・・・が見えてこないので怖いのです。極端なケースを言えば、「満足な食事を与えてくれない」「身体的ではない、言葉による暴力を受けている」こんなことが起こっていても、訴えることができないのです。当然、ケアギバー自身が暴露することはありません。政府機関やエージェンシーが定期的に監視することになっていますが、目に見えるクライアントの症状がない限り、なかなか気がついてもらえないのです。
親御さんは、常にお子さんの様子を観察してください。
●今までそんなことはなかったのに、急におもらしをするようになった
●イライラして情緒不安定気味
●何をするにも時間がかかるようになって、きちんと日常生活を送れなくなってしまった
・・・などの症状が出てきたら、それは、「なんらかの不快を訴えているおこさんなりのサイン」かもしれません。