専門家を選ぶ時の注意点
Tips, tricks and traps of selecting right therapists
正式な診断が下り、治療法も決まったら、今度はその方針に沿って指導してくれるスペシャリストを選ばなくてはいけません。しかし、どうしたら、信頼できるスペシャリストを探すことができるのでしょうか?
残念なことに、世の中には「自分は専門家だ。」と公言しているのにもかかわらず、実際には資格も持っていない、きちとした訓練も受けていないスペシャリストもいます。
その人が「資格要件を満たし、こどもと家族のニーズに合う経験を満たしているのか」を判断するのに大切な注意点をにまとめてみました。参考にして下さい。
言葉に潜むサインに注意しながら、最初の面接で質問しまくる!
まず、最初の面接で、「こどもに必要な治療・訓練」について話し、「そのスペシャリストは何ができるのか?」それまでの学歴・資格・経験などを訊ねましょう。少しでも疑問があるのであれば、納得がいくまで聞きまくること。
「自分はスペシャリストだ!」と誇示しておきながら、何を専門としているのかを曖昧にするような人には要注意です。本物のスペシャリストは、 曖昧にせず、具体的に専門としている療法をきちんと説明することができ、自分の専門分野とリミット(専門外分野)を把握しているはず。
もしも、「なんでも対応できますよ。」と、弱みを見せない人には、かえって要注意です。多岐にわたる異なった分野において専門性を主張するのであれば、一つも専門分野を持っていない可能性もあります。多くの異なった症状があるのにもかかわらず、いつも同じ治療法しか提示しない、用いない療法士にも注意が必要です。発達障害の治療には、「万能薬」はありません。求められている治療・訓練が、専門外だった場合は、「こちらから頼んでいないのに、別のスペシャリストを紹介してくれる」などの配慮がある人は、プロ意識が高い人だと言ってもいいでしょう。
また、治療の成功を保証したり、具体的な成功率を約束したりするスペシャリストがいたら、怪しいと思ってもいいでしょう。それまでに治療を施した被験者達の名前を「参照」として提示するのはいいですが、その人達からのいいTestimonials(証言)のみをひけらかすのであれば、疑問を持つべきです。
一般人にはわからないような専門用語を得意げに並びたてるスペシャリストもいただけないですよね。本物のスペシャリストは、わかりやすい言葉で、誰にでも理解できるように説明するものです。
被験者の獲得にやっきになっているスペシャリストもいます。そういう人達は、いつも自分のクレジットになること、お金のことばかり考える傾向にあるそうで す。最初は、セールスマンになっているので、印象の良い態度をしてくるでしょう。しかし、被験者にいざなってしばらくすると、本性がわかってきます。時間外で、なんてことないアドバイスをもらおうと思ったら、「無償で情報を提供することは無駄。」とばかりに、ふるまってくるかもしれません。
名前の後に続く文字に注目!
カナダというか西洋では、名前の後にやたらと「地位だ、学位だ、専門分野だ」と、書いてありますね。あれは、何も自慢するだけのために書かれている のではないんです。これらの情報を元に、その人が「どんな教育を受け、どんなトレーニングを積んで、認可された専門家なのか」の判断材料になります。
しかし、これらの「地位だ、学位だ、専門分野だ」の情報や略語を上手に記載することによって、実力以上に「凄い人だ」と、誤解してしまう可能性もあるので、 よくわからない名前が列記されていたら、質問すること。吉と答えてくれなかったり、お茶を濁す表現で、巧みにかわそうとしたら、怪しいかも・・・
学位からわかること!
世間一般に知られている学位
・B.A. (Bachelor of Arts 文学士号)
・B.Ed. (Bachelor of Education 教育学士号)
・M.Sc. (Master of Science 理学修士号)
・M.D. (Doctor of Medicine 医学博士号)
・Ph.D. (Doctor of Philosophy 心理学博士号)
普通取得には、「Bachelor's degree学士号」は4年、「Master's degree修士号」は、学士卒業後1~2年、「Ph.D.博士号」は、修士号卒業後3~5年かかります。ひとつ以上の学位を持っている場合、一般的には最終学位のみを記載しますが、全て列記している人もいます。下記のようなあまり知られていない学位がある場合も、きちんと質問をして、どういった学位なのかを聞きましょう。
・Psy.D. (Doctor of Psychology 心理学博士号)
・D.Litt. et Phil. (European equivalent of a Ph.D ヨーロッパにおける博士号)
分野に関係のない学位を記載しているため、つい誤解してしまうスペシャリストもたまにいます。
注意が必要です。
例えば・・・Occupational Therapy(作業療法)のB.A.(Bachelor学士号)と、History(歴史)のM.A. (Master修士号)を取得しているOccupational Therapist(作業療法士) は、名前の横に 「M.A.」と記載してはいけないのです。誰もが、Occupational TherapyのMasterを持っているものだと勘違いしてしまうからです。この場合は、「B.Sc.」または、「B.Sc. (O.T.), M.A. (History)」となります。
学位さえもっていれば、「教養が高く、きちんとした訓練を受けている専門家」という印象を受けがちですが、ここにも注意が必要です。教育機関によっては、ほ んのわずかなエッセイ提出や、ほんのわずかなコース(認可されていないものも含む)の受講、悪いケースでは、授業料を払って2~3ヵ月間受講しただけで学士号や修士号をもらえちゃうところもあるそうです。Diplomaと呼ばれる「免状・終了資格」は、もっと悪質で、まったく関係のない教育を施しているところや、まったく何の教育も行っていないところ、更に、「ハーバード大学のDiploma」などは、お金を出せば購入可能なところまでもあるというから驚きですね。このニセDiplomaは、実際にBC州で発覚したそうです。
その他の略語にも注意!
・FRCPC (Fellow of the Royal College of Physicians of Canada)
Royal College of Physicians of Canadaの研究生で、特別専門分野
(小児科や神経学、精神医学など)を持つ医師。
・ABPP (American Board of Professional Psychology)
American Board of Professional Psychologyの基準に沿った特別専門分野
(臨床神経心理学、行動心理学、学校心理学など)を持つ心理学者。
・CCC-SLP (Certificate of Clinical Competence Speech Language Pathologists)
北米で臨床的能力があると認められた言語聴覚士。
・BCBA (Board
Certified Behavior Analyst)
Behavior Analysis Certification Boardの基準に沿った、修士号または博士号
レベルのApplied Behavior Analysis (ABA応用行動分析学)を習得した専門
家。応用行動分析は、多岐に分野があるため、自閉症治療に経験があるとは限
りません。
・BCABA (Board Certified Associate Behavior Analyst)
学士レベルのApplied Behavior Analysis (ABA応用行動分析学)を習得した専
門家。どこの専門組織に属さず、独立してこども達の療育に当たることは許可
されていません。
通常は、CertificatesやDiplomasなどの免状をだらだらと記載するのは望ましくありません。いくつも列記するのは、かえって見る人を混乱させることになりかねません。意味不明な名前があったら、内容をきちんと本人に確認すること。
学位だけでなく、"College"にも注目する!
BC州では、Health Professions Actに基づいた、23種類の異なった分野のスペシャリストがいます。その分野毎に"College"と呼ばれる機関があり、教育・訓練・実践の基準や、登録申請にあたっての評価、倫理規定を滞りなく行うなどの義務を担っています。BC州では、「Royal College of Physicians and Surgeons/ The College of Physical Therapists of BC/The College of Dietitians of BC/The College of Psychologists of BC」などですが、スペシャリストは、いずれかの"College"に属することになっています。
通常は、名刺などに"College"の登録番号や、登録の有無が「R.Psych.=Registered Psychologist」のように記載されています。記載がない場合や、記載があっても念のため確認したい場合は、"College"のウェブサイトに行ってチェック。そのスペシャリストに何か問題があれば、所属している"College"に提起することも可能です。
保健医療よりも、教育がメインになっているスペシャリストは、Health Professions Actの管轄には含まれません。例えば、多くのspeech language pathologists(言語療法士)は、教育機関制度の管轄に属することになります。
本当にそのスペシャリストは、あなたのニーズに応えてくれる?
学位から、職歴から全てのチェックが済みました。でも、どうやったら、そのスペシャリストがあなたに相応しいのかがわかるのでしょうか?それは、いくら書面上でいろいろ調べたところで、見えてくるものではありません。結局は、とりあえず「起用してみること、試してみること」以外はベストな道はないの です。でも、実際に採用しても、実力があるのかどうか・・・を判断するのには、親御さんにもベースとなる知識がなければできませんよね。なので、親御さん も日ごろから専門書やインターネット、他のスペシャリスト、ネットワークを通して、情報収集しておく必要があります。
一般的なセッションは、親御さんとスペシャリストの面談から始まります。こどもの状況、置かれている環境、問題行動、そして今後の目標などを事細かく話し合 い、スペシャリストは、これからの提案をします。提案された治療法、やり方に疑問をもったら、即質問を。親御さんが「これはこどもにいいかも。」と思われる情報を入手したら、スペシャリストは、に相談してみるのもいいでしょう。
いくらいい学校を卒業して、素晴らしい資格を持っている専門家であったとしても、いい加減な性格であれば、意味がありませんよね。例えば…「約束したことを守ってくれない」とか「伝言をお願いした重要な情報を他の現場チームスタッフに何度も伝い忘れる」とか「大切な書類を紛失する」とか「自己中で、子どものことを中心に考えてくれない」とか「遅刻が多い」とか「ある日突然、何も言わないで仕事に来なくなる」など。。。こういう態度をする人は、大問題です。いい関係が築けるはずがありません。
あとは、とにもかくにも、人間対人間のフィーリングですよね!
【関連/引用/参考サイト】
・ACT How to Assess the Qualifications of Professionals
-Tips for Parents by Dr. David Batstone-